全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十六部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 最適解 第三章
「いや、最後っ屁かな? 」
修二さんがバリアを張りながら、そう呟いた。
確かに連続のミサイル攻撃が終わると、それ以降は沈黙した。
最後っ屁と言われればそうなのかもしれない。
追撃が無いし。
「攻撃対象を絞らないで部下に攻撃を任せて、本人があんな攻撃をしたらアホみたいですね。私も混沌の女神様の後継者の少女の魂を持っているので、分かりましたが……」
「あれなら、さっきの奴の方が強かったな。自分でルドラとか自慢げに威張って言ってたけど」
雪龍さんと修二さんが呆れたような顔で話し始めた。
何か御堂祐樹がいるあたりで何かあったらしい。
「あんなバレバレの罠にはまるなんて……」
「ああ、ひょっとして、外側の獅子の軍団の弱い奴に仕掛けましたか? 」
俺が雪龍さんの様子から聞いてみた。
さっきのルドラはそれを誘いだと警戒して手を出して無かった。
出しちゃったのか。
俺が喋っていたので、雪龍さんがコクリと頷いた。
「まあ、燐女さんの無茶苦茶な連携取れてないように見える突撃を受けて混乱しているから、もう指揮系統もバラバラで、本人もヤケクソなんだろうけど」
修二さんが苦笑した。
それでアポリトさんが索敵画像を見てじっと観察している。
「えええ? この攻撃って連携が取れているんですか? 」
「燐族って一人の指揮官でコントロールしてんじゃないんだよ。単純に仲間がこうなったら、こうするって徹底的に教え込まれていて、各艦がそれぞれ独自に動いて、そのルールで攻撃すんだ。だから、よく見たら、攻撃されそうになった艦を思わぬところから別の強襲型の蒼穹船が攻撃しているだろ? そういうルールに基づいて動いているからだ。迷う状況が無いんだよ。こういう状況だと、こう攻撃するとか部分部分で決まっているから。一見は適当に突撃しているように見えるけどな。全部ルールに従って攻撃している。多分、降下作戦も燐女さんが突撃としか言ってないと思うわ」
「そ、それは厄介な敵ですよね? 」
俺が驚いた。
徹底したルール化により、方向性だけ与えたら各艦がルール通りに攻撃するわけだ。
普通は連携させて指揮するのを最上と見るのに、それとわざと反対の事をしているのだろう。
燐族は最初から乱戦を目的にした行動原理だと言う事だ。
「普通は、それはしないよな。そんなのやったら作戦とかバラバラになるじゃん。指揮の方向性も無茶苦茶になるし」
「それが燐族の性格なんだろう。そう言うのが好きと言うより、下手に上から指揮されてもあまり言う事聞かないから、逆にそれぞれの時の対応だけは徹底的に決めてあると言うやり方だ」
「絶対に乱戦になるじゃん」
「乱戦しか頭にないもの」
などと修二さんと心の師匠のカルロス一世と祝融さんが呆れた顔で話し合っている。
乱戦ってある意味指揮系統もちゃんとしてない時に起こる話だから、それを特化した戦闘方法って斬新と言えば斬新だけど、まともな戦い方でないことは確かだった。
「こちらに来るな」
「誰がですか? 」
修二さんの呟きに涼月東が突っ込んだ。
目の前に見るも哀れな身体を円形に数か所にくり抜かれた男が近づいて来た。
人間なら死んでいる。
まだ歩いているのは、恐らく創造主だからだろう。
「こ、降伏いたします。慈悲を……マカパガルにございます」
その創造主らしい男はそう修二さんに抱かれた光の混沌の女神様の少女に跪いた。
黒を基調にした軍服を着ている創造主なので、恐らく戦闘に特化している世界なのだろうか?
「マカパガル? あなたはっ! まずは自分の世界の立て直しをと話しておいたではないですか! 」
修二さんに抱かれている光の混沌の女神様の少女が怒っていた。
「申し訳ありません。どうしても立て直しに時間がかかり、修二と言う創造主からの檄を受けて、つい乗ってしまいました」
「え? 」
「もう一人の方だ」
マカパガルがそう話すので、皆が修二さんの方を見たが、まあそうだろうな。
「檄をだしたのか? あのもう一人の馬鹿は……」
「この凝り固まった世界を新たに作り直すと……」
「まずいな、となると、まだ創造主が動くぞ? 」
「これだけでは済まない」
などと心の師匠のカルロス一世とアポリトさんが呻いた。
「何という馬鹿な事を、私が……時間を見れる私が……、御堂祐樹を後継者にすると言う以外の他の答えが無いか探していないとでも思ったのですか? 」
光の混沌の女神様の少女が震えるように叫んだ。
そう言えば、この御方も時間を見れるのか。
「となると! えええええええええっ! 全ての世界の一番最適解が、御堂祐樹が後継者になる事なの? 」
つい、俺が叫んでしまった。
空気が冷たい。
言っちゃいけなかったかな?