全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十五部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 激突 第六章
「隠れていたのはお前か? 」
祝融さんが睨んだ。
「いやいや、流石に奥の院のまつろわぬものの選りすぐりがここにいたのなら出れませんからね。あれは戦闘に特化した怪物どもですから」
多分、闇の創造主の配下なら、悪魔と言う事か?
侯爵を名乗るなら、相当に階級は上の方なはず。
それに怪物だと言わせるとか、エリンギさんとか本当に化け物だったんだな。
「あれも不死ですからね。我々は不死と言うよりは死んで次の身体を作って再復活するのに時間がかかりますから。身体の部分が残っていたら、そこから元に戻ってくると言う彼らの不死とは違いますよ」
ディアボロス侯爵がそう説明してくれた。
なるほど、不死と言ってもいろいろあるんだ。
「いろいろと解説してくれますよ。意外と良い人なのでは? 」
などと涼月東が俺に話す。
「ノンノン、多少は理解してもらわないと分かってもらえないから説明しただけです。闇の創造主が意外と優しいので勘違いされますが、我々は本来は悪魔と呼ばれる存在。決して、良い人などと呼ばれる存在ではありません」
などと人差し指を左右に振りながらディアボロス侯爵が微笑んだ。
「義兄を裏切ったのか? 」
珍しく、心の師匠のカルロス一世が怒声を放つ。
「ノンノン、勘違いなさらないでください。我らが創造主を裏切るわけがないじゃないですか」
「ああ、もう一人の修二さんについたんだ」
俺がそれで理解した。
「それって、裏切りにならないの? 」
「同じ修二さんですから」
叢雲さんの突っ込みに俺が答える。
どちらも修二さんである以上裏切っているわけではない。
なるほど、あの修二さんに仕えてたけど、より理知的で冷徹な修二さんが現れたのなら、確かにそちらの修二さんに行くよな。
どう見ても、修二さんの無茶苦茶な適当な部分と冷徹で指導者みたいな部分が分離しているし。
「そうか。思っている事を喋る呪いがかかっているのですね、奥の院の。おかげで話が早い。その通りです。我々は本来世界を二分して光と闇で争う立場なはず。それがどうもあの闇の創造主殿はそういう意識が乏しくて困る。まあ、光の創造主も実は闇の創造主殿が作っただけで、創造主として本来はどちらの個性も持っているから、それで若干光の部分も持っているのが問題だったんですよね。恐らくは……」
「なるほど、今までは義兄に仕方なく従っていたが、嫌な部分が排除された自分たちが仕えるべき存在ががついに現れたと言う事か? 」
心の師匠のカルロス一世が呆れたように話したら、肯定するように微笑んだ。
「いや、別に魔族のドラゴンとして言わせてもらえば、あれはあれで面白かったと思いますがね? 」
「ゼブ殿の眷属如きが口を挟まないでもらえませんか? そういう魔の世界の身分と言うものをあやふやにしてしまう、いい加減な闇の創造主殿にも呆れていたのです」
ディアボロス侯爵が睨むように答えた。
雪龍さんはゼブさんの眷属だったんだ。
中世ヨーロッパの貴族の服をわざわざ着ていて自分の爵位をことさらに話すくらいなんで、そういう階級社会に拘りがあるんだろうな。
「でも、俺達の現在の時代の貴族の現実は利権に食い込んでブィブィ言わせている人もいるけど、資産運用とかうまくいかないで税金を払うために働き詰めでひーひー言っている人もかなりいるそうなんですが……」
「そういう余計な話はいらないのですよ」
一言多い涼月東が我々の世界の現状の貴族社会を言っちゃったので、ディアボロス侯爵がイラっとしていた。
どういう身分だろうが、上手くやれた奴とダメな奴ではどうしても差が出るのはしょうがないのだろうけど。
「ふふん、いろいろと配下として不満が溜まっていたと言う事か……」
などと、この人に言われたら自分の不満が小さく見えるであろうくらい苦行を積んできて、二回目でも、またしても積もうとしている男……一条和馬が苦笑気味に話す。
「一条和馬さんに言われると魔界の侯爵が小さく見えますね」
「なんだと? 人間如きがっ! 」
自分の苦労を馬鹿にされたと思ってディアボロス侯爵が怒る。
涼月東の一言多いのは、良い方に行くと素晴らしいが、悪い方に行くと困るのであった。