全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十五部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 激突 第五章
雪龍さん達の頑強なバリアは足元にまで球体に出来ていた。
「なんで、足元まで? 」
「下が崩れ落ちるかも知れんだろ? 」
それに驚いた神無月涼さんが聞くと祝融さんが冷ややかに答える。
なるほど、この崩壊によっては最下層まで落ちる事も計算に入ると言う事か。
流石にあらゆる状況を考えているんだな。
「一応、落下したら、中の方の保護は私がしますから。そうしないと潰れちゃうかもしれないので」
そう20歳後半の美しい女性に変わった雪龍さんが答える。
至れり尽くせりだ。
「凄いな。やはり、向こうの世界の方がこういう力は優れているのだろうな。俺では、ここまでの精度は出せない」
そう祝融さんが感嘆していた。
バリアの力の協力はしているが、実質は雪龍さんが張っているようなものらしい。
ただ、これで安心かは、落ちてくる軍艦が増えていて、次々と崩れかけた階層に当たって爆発を続けているのでわからない。
「じゃあ、私は向こうのサヨ婆さんの方に行くから」
いつの間にかバリアの外にいたエリンギさんが話しかけてきた。
「いつの間に、外に? 」
「最初から出ていたよ」
そうエリンギさんが身体を揺すって笑っているように見えた。
全然気配を感じないので、真面目にどれほど強いのか分かんない。
すでに身体を削られまくっているのに、平気だし。
そして、背後に異形の物が次々と姿を見せた。
どこに、こんなにいたのか分からない。
それはまさにまつろわぬものにふさわしい威容だった。
それぞれが怪物たる姿をしていた。
ただ、日本の妖怪に微妙に似ているようにも思われた。
「ご武運を」
雪龍さんがそう目を瞑った。
「それはそちらも同じだろ。こちらに隠れている連中がいる。ここの局面はまだ二転三転するよ」
そうエリンギさんが話すので、真面目にぞっとした。
そうして、まつろわぬものの姿は消えた。
サヨ婆様のところに向かったのだろう。
「何が隠れている? 」
心の師匠のカルロス一世が動揺してアポリトさんに聞いた。
「いや、索敵映像を見る限りは表示されていない。となると……」
「相当の手練れか? 」
「こんな……こんな……悲惨な状態で、まだ悲惨になっていくんですか? 」
神無月涼さんがその話を聞いて余計に動揺していた。
「まあ、俺もいろんな戦場にいたけど、そこで見たこともないくらい破壊の連鎖になっているからな」
叢雲さんも同意していたる
何しろ、文月家として、世界の戦争の映像は見るけど、ミサイル攻撃を受けた街と言うよりは、第二次世界大戦のB29に空爆されているようにすら見える惨状が目の前に広がっていた。
とても、戦闘中に見えない。
破壊の廃墟の後のような状態で、さらに悲惨な破壊が続いている。
「索敵映像を見たが、100メートルくらい先にここより頑強で大丈夫そうな場所がある。三人いるからバリアごとテレポートできますよね? 」
そう一条和馬が心の師匠のカルロス一世に聞いた。
どうやら、爆龍王ゴウオウがこちらに向かっているので、そのコースを外すために、アポリトさんの三次元の空間把握ができる索敵映像を見て必死に調べていたらしい。
「よし、じゃあ、そちらに移動しよう」
そう心の師匠のカルロス一世が答えた瞬間に目の前に異様な気配がした。
「いや、今、移動されたら困るのですがね」
目の前の破壊された階層から中世のヨーロッパ貴族のような金糸の服を着た貴族のような人物が現れる。
「お、お前は? 」
心の師匠のカルロス一世とアポリトさんが驚いて目を見張っていた。
「妙な殺気ですね。裏切ったんですか? 」
雪龍さんがそう睨んだ。
「「誰? 」」
俺とか涼月東が思わず聞いた。
「私は闇の創造主の旗下の四十六諸侯の一人ディアボロス侯爵と申します」
そうその男は優雅に一礼した。