全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十五部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 激突 第四章
「どうも、爆龍王ゴウオウがいつもの如く馬鹿な事をしているのね」
雪龍さんがそちらの方を見てため息をついた。
確かに、破壊の連鎖で崩れているのが近づいているのが分かる。
アポリトさんの索敵映像を見るのが怖い。
地響きとか激しく起きていた。
「とにかく、急いで脱出したいのだが……」
心の師匠のカルロス一世がそう頼み込んだ。
「一応、あなた方を運ぶ脱出用のポットを貰ってきたのだけど……」
そう背中を見せた。
何かを背負っている。
そこに脱出ポットみたいな物体を見るが、どう見ても小さい。
皆で固まれば入れそうだが、そんなギリギリの円筒形のサイズだ。
「まあ、命には代えられませんしね」
涼月東が淡々と話す。
俺は今回からの地獄だが、涼月東はもっと早くから修羅場を現場で見ているはず。
どちらかと言うと、俺は次期当主なんで経営学とかそっちの方が忙しかったからだ。
現場を知らねば上には立てないと言うのも正しいのだが、文月家は監視や追跡などが危険なのがメインの業務の為に、俺は大学に行って初めてやばい話が来た。
「まあ、そうですよね。高校一年生位から行かされている私とは違いますから」
などと俺が喋っているので涼月東がちょっと嫌味っぽく話す。
「でも、こういう話が来るんだったら、もう少し早く経験していた方が良かったかなとか思うけどな。まさか、こんなやばい話が初手だと思わなかった」
そう俺も自嘲気味に話す。
「いや、無理だろ。早く来ようが後で来ようが、結局は運だけだと思う」
神無月涼さんの呟きが辛い。
「ああ、そう来るか……」
アポリトさんがいきなり、そう呟いた。
慌てて索敵映像を見ると、下に降下しないように龍女さんが配慮していたらしいが、とうとう燐女さんの強襲型の蒼穹船が続々と降下始めた。
索敵映像を見る限りは荒っぽさが酷すぎる。
迎撃と言うより特攻が始まっているように見えた。
「なんで、敵艦をぶつかって沈めていってるんですか? 」
「砲がついていると思うんですが……」
涼月東と叢雲さんが呻く。
さっきまで距離を置いて撃ち込んでいたのに、突然突撃を敢行しだした。
「まあ、燐族は気が荒いし、突撃して敵艦を沈めれるように強襲型の蒼穹船は出来ているのも確かだが、どちらかというと、これは龍女さんに、我々が突撃攻撃を敢行したばかりに星に降下してしまいましたってやりたいんじゃないかな? 」
「結局、そろそろ抑えるのも限界だったって事では無いかと」
心の師匠のカルロス一世の言葉にアポリトさんが同意した。
「落ちて来てる。落ちて来てる」
祝融さんが呆れたように呟いた。
次々と新しく攻めてきた創造主の艦艇が落下してきている。
次々とそれらは深い階層に艦艇の重さで突っ込んでいって爆発炎上しだした。
「燐女さんと部下達は目立ちたがり屋が多いから、しょうがないですね」
などと雪龍さんが言うが、そんな言葉で済むような状況ではない。
地獄絵図が始まっているように見えた。
「あぁあああぁぁあああぁああぁぁぁぁあぁ! 」
神無月涼さんの呻きが辛い。
「とにかく、脱出ポットに乗せて貰って、早く離脱しないと」
祝融さんがそう話す。
「いや……これは逆に心の師匠のカルロス一世さんとかにバリアでも出して貰ってその中で耐える方が良いのでは? 」
俺が直感的に呟いた。
雨のように敵の軍艦が破壊されていて、それが落下して来ていて流星群みたいだし、ぶっちゃけ、それに合わせて燐女さんの強襲型の蒼穹船が大量に強引にこの星に降下して来ていた。
つまり、龍女さん蒼穹船に行く途中で巻き添えでぶつかりそうなのだ。
ぶっちゃけ、燐女さんの強襲型の蒼穹船が連携の取れていないバラバラの荒っぽい降下なんで、それも不測の事態が起こりそうに見えた。
もはや、あちこちで火の海が出来ている。
しかも、階層が脆いので、重さで階層深くに落ちていって爆発した敵の艦艇がさらに煙突効果で爆発的に炎が拡がって酷い事になっていた。
「多分、そちらの方が正しいでしょうね」
背中の脱出ポットを下におろすと、雪龍さんが突然変形して人間型に変わった。
やはり、良くあるパターンのドラゴンが人間型になるパターンだ。
そうでないと御堂祐樹の嫁にはなれないし。
ただ、実際に荒々しいドラゴンが美しい女性に変わるのを見るのは初めてなんで驚いた。
「一緒にお願いします」
そして、心の師匠のカルロス一世と祝融さんに頼むと雪龍さんがバリアを一緒に張っていた。
実際、この流星雨の状況では、それが一番正しいと思われた。