全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十五部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 激突 第三章
「懐かしいですね」
そう雪龍さんが心の師匠のカルロス一世やアポリトさんに話しかけてきた。
ドラゴンって喋るんだ。
真っ白い雪のような色のドラゴンが微笑んでいるようにすら見える。
表情まで出せるとか。
「なんか喋っている子がいるけど、これが呪いにかかった向こうの旦那の友人? 」
友人と言えるかどうかわからないけど、一応、友人と御堂祐樹が思ってくれていたらしい。
そうでないと、こういう認識は無いはずだ。
「全部喋っているからそうなのね」
そう雪龍さんが苦笑した。
「すまないが、蒼穹船の母艦が無事なら避難したいんだが……」
「ちょっと数が多いわね」
雪龍さんがそう呟いた。
背中に乗るにしても、少し多いのは間違いない。
「いや、燐女さんの手は借りたくない」
「だと思った。龍女さんも地上に行かさないように苦労しているみたいだしね。ちょうど昔に燐女さんが暴れて大陸を鎮めた時と似たような感じの星の建物の構造の脆さだし」
心の師匠のカルロス一世の言葉に雪龍さんが苦笑した。
皆が燐女さんが危険だと自覚しているんだ。
恐るべし。
「そういや、義兄弟はどうなのか? 」
「まだ盾として頑張っているわよ。おかげでもう一人のミツキさんも獅子の軍団も破滅的な攻撃が出来てないようだから、流石よね」
そう雪龍さんが旦那わ褒めるように話す。
いや、それって命がけなんだから、どうなんだろう。
「でも、旦那様しか無理だもの。本気で双方がぶつかれば、こんな星なんて、すぐに塵に変わるわよ」
などと雪龍さんの言葉が怖い。
「流石にだいぶ経つと思うんだけど」
一言多い涼月東が思わず言ってしまう。
「大丈夫よ。伊達に獅子の軍団の旦那様を一回目でやっていたわけではないから。耐える事では多分、創造主の中でもトップクラスよ。ずっとずっとああいう壁とか盾みたいなのは続けて生きていたのだから」
その雪龍さんの言葉で全員が絶句する。
心の師匠のカルロス一世が涙を流しだした。
嫁の数は少ないけど同じ状況らしいので、自分の甥として同胞として涙を流さざるを得ないのだろう。
「あいつを単なるヒモの息子と考えていたのは間違いだったのかもしれないのかな」
そう祝融さんが言うと、御堂祐樹の方に向かってまたしても敬礼していた。
ずーっと、こういう事をしてきて生きて来たんだなぁ。
「まあ、大なり小なり猛禽とか修羅とか奥の院とかと結婚するとヤマトでは普通の話だけどな」
一条和馬の疲れ切ったような柔らかい苦笑が辛い。
なるほど、若い女の子を紹介しようかとか獅子の軍団の人達に俺達が言われると止めた方が良いと止めるはずだ。
「それと光の混沌の女神様の方はどうなんだ? 」
「ああ、ルドラとか言うやつね? 神子とこっちの修二さんが防いでるわ。どっちかと言うとこちらは有利に進んでいるから大丈夫だと思う。光の混沌の女神様の方も力の回復に移行しているみたいだし」
「力の回復? 」
「時間を止めてた格納庫ごと突っ込んだんでしょ。だから、相当力を使ったみたいだよ」
「なるほど」
アポリトさんが冷静に状況を把握していく。
のちの向こうの世界の大政治家とかになるだけはあって、冷静だ。
「どちらかと言うと、もう一人の修二さんだね。ツキヨさんは何かあって別の場所に行っちゃったんで、残ったサヨさんと相当離れた場所でやり合っているらしいけど、サヨさんを圧倒しているらしいのよ」
「えええっ? 修二坊ちゃんのが弱かったのでは? 」
黙っていたエリンギさんが驚いたのか声を出して雪龍さんに聞いてきた。
「多分、修二さんの適当さが無くて緻密さが残っているみたいで、修二さんの強い部分を結構持っているみたい」
「じゃあ、助けに行かないと」
そうエリンギさんが慌てて、仲間にテレパシーかなんかで連絡を始めた。
それよりも、俺としたら蒼穹船に早く退避したいのだけど……。
俺がちらと見たら涼月東も同意見らしい。
こんな激戦地に単なる人間がいるのは辛すぎる。