全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十四部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 死闘 第五章
「馬鹿じゃないの? 馬鹿じゃないの? 」
「相変わらずだなぁ」
などと心の師匠のカルロス一世と一条和馬の悲しい言葉が続く。
だが、爆龍王ゴウオウはある意味、最強の攻撃力を持つあちらの世界の伝説のモンスターだと聞く。
かっては御堂祐樹の適当な策略でたった一夜で一つの大国家を破壊したと聞く。
それならば、爆龍王ゴウオウの戦力は、我々の戦力は獅子の軍団だけの状況において、我々に有利になるのではないか。
そう、俺は思うのだが。
まあ、悪い可能性より良い可能性を考えたいと言う人間の心理かも知れないけど。
それにしても、こんな機能もあったのかとアポリトさんの索敵映像が高度すら視野に入れた形に三次元のように変わる。
本当にものすごい。
「これがあればダンジョンとかでも無敵でしょうね」
涼月東のもっともな言葉が続く。
何しろ、あらゆる場所の構造から、敵の兵力の大きさとか武力まである程度掴めるのだ。
そして、落下してくる爆龍王ゴウオウを見て呻く。
「でかい! 」
「なんだ、これ? 」
全長は30メートル近くある。
それが降りていくにつれて、膨らむように巨大化していた。
ひょっとしたら蒼穹船に乗るために身体を小さくしていたのかもしれない。
「あれは30メートルから全長1キロメートルまで変化できるからな」
アポリトが呻く。
「それってとどういう理屈なんですかね? 」
涼月東が突っ込んだ。
そんなウルト〇マンとかじゃないんだから、巨大化って……。
「知らないが、そういう適当な存在だ。我々の世界は強ければ強いものほど適当だからな」
などと心の師匠のカルロス一世の解説で呻く。
御堂祐樹とか修二さんを見ていると否定できない話だ。
彼らも、こんな適当な存在があるのかって存在だし。
そもそも、不死だし、時間の巻き戻しなどコントロールできて、しかも誰よりも幸運を持っているとか、チートを通り過ぎている。
そして、それだけのものを持っていて、何がしたいのか訳が分からないと言う。
「父親の、その日だけ生きれればいいやって言う適当な性格を色濃く受け継いでしまったからな。しかも、不死なのに……」
などと祝融さんが苦々しく話す。
不死で無敵なのに、その日暮らしでいいやとか言う想像を絶する存在なのだ。
「幸い、爆龍王ゴウオウは相当遠くに落ちているな……」
アポリトさんがほっとした顔をした。
大体ここから水平に移動して四百キロくらい先に降下しているのだ。
遠過ぎて、こちらの応援をしに来たのか何だか訳が分からない。
こんな馬鹿な援軍って存在するんだ。
「いや、でも、助かったのでは? これ、多分、隕石が落ちてくるくらいのインパクトがありますよ? 」
涼月東の分析が辛い。
その通りだ、高高度からの超重量の落下とか、この崩壊が続いている城を建て増し建て増しして嵩上げした惑星に降りてくるべき存在ではない。
「隕石攻撃だな。援軍になってない」
祝融さんの呟きの後、凄まじい音を立ててそれは、この星に着弾した。
まるで核爆弾だ。
凄まじい轟音が響く。
こちらも揺れていた。
おかげて崩壊が早まる。
そして、索敵映像には救いがないものが映っていた。
もちろん、衝撃でクレーターも作っていたが、さらに深く深く地下に爆龍王ゴウオウは落下したままで突っ込んでいっていた。
「全ての階層を突き抜けて行っているな」
「どこまで行くんだ? 深すぎて出てこれないじゃないか」
「というか、これ死にませんか? 」
涼月東の冷静で客観的な指摘がきつい。
隕石の如くクレーターを作った上に、その後の階層の脆さから深く深く崩れて落ちている。
索敵映像で見る限りでは億単位の年数で積み重ねてきた全てを突き抜けて、本当の惑星の底につきそうだ。
一体、何しに来たんだろう。
「まあ、いつもの事だがな」
アポリトさんの言葉が辛い。
「俺達の世界はな、強ければ強いほど、アホなんだ」
などと心の師匠のカルロス一世の新たな言葉が酷く切なく感じた。