全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十四部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 死闘 第三章
「で、やばい話とは? 」
一条和馬が冷静にアポリトさんに聞いた。
「聞かなくてもいいのにっ! 」
「あーあーあーあーあー! 」
俺と涼月東が叫ぶ。
「いやいや、悪い話はちゃんと聞いておかないと。それだけでも助かる可能性が上がるんだから」
そう一条和馬が淡々と話す。
何と言うことだ。
一回目と合わせると60歳くらいの年齢になるらしいが、まさにベテランの域である。
経験に裏打ちされたサバイバルの知識が素晴らしい。
これほど頼りになる男だとは。
「だから、ミツキ皇帝が側近の側近としていて、ヤマトの最高幹部だったんだから」
アポリトさんが苦笑している。
「いや、その話はいいから。早く、次の話をしてくれ」
「新手だ。多分、気配とかからすると別の創造主だと思う。別動隊が上空に集結しつつある」
アポリトさんがさらりと言う。
「うわぁ、いろいろと恨みを買っているんだな。混沌の女神様って……」
「いや、野心だろ。多分。ルドラがダメージを与え切ったところで、参加するつもりだ。今、もう一人の姪を混沌の女神様の主宰者の位置につければ最側近になれるからな」
祝融さんのため息に心の師匠のカルロス一世がさらにえげつない話が続く。
誰もがここぞと言うところで力を貸す事で混沌の女神様の側近と言う甘い汁を吸おうと来ているのだろう。
「あちらのミツキさんもミツキさんだから、真面目にそんな簡単に側近になれないと思うけどな。ついつい目の前に大きな餌が見えると飛びついてしまうのは良くないと思う」
などと一条和馬に言われては、誰も反論できない。
一番ミツキさんを知り尽くしているのは、恐らく御堂祐樹を除けば一条和馬しかいないだろうし。
「修二さんは入らないんですか? 」
「入らないよね」
「入らないだろうな」
などと涼月東の思わぬ突っ込みを俺と心の師匠のカルロス一世が否定した。
修二さんがちゃんと教育をしてくれれば、こんな事無かったのだ。
今は祝融さんのヒモ野郎と言うのが分かる。
あの人が危機を作り出して、ドンドン拡げていっているのだと今は確信が持てる。
おそらくはもう一人の修二さんが動いているのだとは思うが、元は同じ修二さんだし。
「やっと、それを理解してくれたか」
目頭を熱くさせて、祝融さんが俺の喋ってしまった思った事に賛同してくれた。
結局、修二さんのあわよくばとかここで倍プッシュとかギャンブラーの血が冷静にやる奴と適当にやる奴に別れただけだろうし。
だから、もう下の安全な階層に降りているから、バッタのように延々と盾になり続けている御堂祐樹が苦労しているのも、そのせいだと思う。
ある意味、問題の原因である存在であるが、御堂祐樹は修二さんの被害者でもあるのだ。
「子供の教育は親の責任だからな」
そう心の師匠のカルロス一世が断言するのは何か違和感があるが、その通りである。
自分の親が教師とかに食って掛かったりと言う姿を見て、ああモンペだなとか思った自分も、ある程度年を取れば似たような気質を自分に見つけて、ああやはり親子なんだと思ってしまうのだ。
血のつながりと言うものはそういうものである。
逆にだからこそ、御堂祐樹もそうだし、ミツキさんもああなのだ。
全ての支配者たる主宰者の高貴なる血と、なんか知らんけど欲張る癖に適当すぎる下卑た血が混ざっているのはそのせいだろう。
崩れて崩壊していく、目の前の城の断層とか見て、死を目前に感じて、凄く切ない。
本当に時間が戻せるようになったら、何としても、大学に行っているあたりまで戻って、彼をもう一つの世界に黙って行かさせよう。
その時は命がけで説得するのだ。
そう思ったら、涼月東も熱い目を俺に向けてきた。
間違っても、自分たちが巻き添えにならないように。
「君達も修二さんに似てきているんでは? 」
などと神無月涼さんに言われるが無視していた。