全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十三部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 崩壊 第八章
それでルドラさんもフリヒリムスさん達もこの場に居なくなったのでほっとした。
まあ、あれだ。
背後から闇討ちをって言わずに、戦術的に挟み撃ちと言うのがコツだな。
そうでないと、ああいう武に誇りを持っている人は卑怯だと言って動いてくれないし。
やっぱり言い方だよね。
「やはり、性格悪いな」
などと俺が喋っているで心の師匠のカルロス一世に突っ込まれた。
でも笑っていて褒めている。
「そらそうだろ? 俺も一回目の時にミツキさんを動かす時は苦労してたから。それでいいんだよ。プライドをくすぐる様に戦術的ってに言えば乗ってくる。だまし討ちでもな」
などと一条和馬も笑っていた。
いろいろ苦労したんだろうな。
「それにしても、全然、兵士達に対しての感情がありませんでしたね。やはり道具でしかないのか? 」
涼月東がさっき思った話を話す。
「俺も同感だ」
「いや、指揮官としてなら、それでいいんだ。感情の揺れがある方がまずい。ただ、終わった後には必要だが、あいつは無さそうだがな」
「多分、そうだと思う」
皆も同感らしい。
どうにも下々の者に対して全く配慮とかなさそうなので、上級国民の冷たさを思い出す。
「いや、貴方も上級国民でしょうに」
「12月家の次期当主は普通に上級国民だと思うけど」
「いや、追放されるんですが……」
などとギリギリと歯ぎしりをするような思いで、涼月東と神無月涼さんに突っ込んだ。
まだ追放されてないとか言うのは無しだ。
これだけやって成果も報酬も何もないし、何の為にここまで最前線で逃げ回ってたのかわからん。
「それは皆、一緒だろ」
祝融さんがそうため息をついた。
その瞬間凄まじい地響きのような揺れが起きた。
「まあ、向こうで義兄弟の獅子の軍団が戦っているし、あちらでルドラとかフリヒリムスさん達とかが戦いだしたら、こうなるよな。どうする? 」
そうアポリトさんが皆に聞いた。
「どうするとは? 」
「何が? 」
などと皆が聞いた。
「この星は本来はもっとサイズは小さくて、城とか次々と全ての大地に建て増しして上の方まで大きくしているだけで、地下はその階層だらけなんだ。それを地上で強大な力でぶつかり合ってたら、全部が地下へと崩れ落ちてしまう」
などとアポリトさんが話すので全員が固まった。
「は? 」
「え? 」
「何億年か知らんけど、建て増し建て増しで地層のようになっているのがこの星だ。だから、崩れたら際限なく崩壊して下の方に落ちることになる」
などとアポリトさんに再度詳しく説明されるが、頭が理解しようとしない。
その時、一斉に鉄のゴーレムが動き出した。
ルドラさんとフリヒリムスさん達の戦いが始まったからだろう。
ひょっとすると修二さんも戦っているかもしれない。
それであちこちが陥没して崩れ始めてきた。
その無敵の鉄のゴーレムが戦闘の為の移動で地面を一斉に揺るがすからだ。
「おいおいおいおいおい! 止めろってばぁぁぁ! 」
「止まれっ! 」
全員が思い思いに叫ぶが鉄のゴーレムの全力疾走は止まりそうにない。
そして、もう一人のミツキさんと獅子の軍団の迸る力が微妙に地面を揺るがしていたが、その振動がとどめになったのか、ボコボコと地盤が沈下し始める。
地盤じゃなくて、単なる建て増しの巨大で深い城なら余計にもろいのだろう。
ルドラさんもフリヒリムスさん達も凄まじい爆発音を響かせながら激しくやらかしている。
あーあーあーあーあーあー。
「大丈夫そうな部分ある? どことどこ? どういう感じ? 」
矢継ぎ早に索敵映像を見て一条和馬がアポリトさんに聞いた。
どうやら、こういうのも一回目に経験済みらしい。
何という有能さだろうか。
全てが崩壊する中で、一条和馬とアポリトさんの指導で俺達はわずかに生きる可能性にとびついた。