全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十三部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 崩壊 第六章
「まあ、その話は置いておいてだな。どうする? このままだとあいつも限界が来ると思うが……」
思慮深いラドウルスさんがそう俺達に話す。
それはそう思う。
実際によくもまあ盾になり続けていると思う。
「全部、普通なら致命的な攻撃だからな。俺なら一撃で瀕死になると思う」
祝融さんが珍しく感心して話す。
「多分、慣れもあるのかも知れんけどな。俺も嫁達の攻撃を何度か受けるとどこで受けたら被害が少ないかとか、いろいろ学ぶし。一応、よく見ると加減はしているんだ。奥の院の出身が旦那に使う技とかは。だから、受け方を工夫すればそれなりに長持ちはする」
などと心の師匠のカルロス一世の異様な話が続いた。
「まあ、愛する人が盾になるのは分かるから、それなりに加減はしていると思うけどね」
「いや、結構、俺達の大妃様の創造世界は創造主達の世界でも屈指の武闘派だからな。その俺達が受けた感じでも充分に致命的な攻撃だぞ? 本当に加減をしているか? 」
「駄目押しをしていないだろう? 」
「いや、駄目押しとかいらないくらい強い攻撃だと思うんだが……」
エリンギさんと思慮深いラドウルスさんの話が聞いていてせつない。
何というか、創造主の世界で名の知れた武闘派の世界のトップランクの戦闘能力を持つ円卓騎士ですら、奥の院の鬼であるエリンギさんの攻撃の定義の違いがあると言う。
「奥の院ってまつろわぬものがいるとしても、本来は後宮の話でしょ? 何か異様な話ですよね。前から思ってましたが……」
涼月東の呟きに深く同意する。
何か、違うんだよね。
まつろわぬものがいるからって事だろうけど。
「実際、戦闘力は高いぞ。見ていて思うが、凄い連携だ。弱めの獅子の軍団とか言うやつが外側からちょろちょろともう一人のミツキとか呼ばれている奴に対して攻撃するんだが、それをもう一人のミツキは狙ってが攻撃しようとしない。おかしいなと思って良くみていると、獅子の軍団とやらの中で弱い奴をそういう攻撃をさせる事で囮に使っている。それに攻撃したら立て続けてにコンボの攻撃が来るようになっている。仲間内で連携していて誘いに使っているんだ」
「ああ、やっぱりそうか。俺もそれは思ったんだ。それも囮って感じでなくて、さらっと連携した攻撃に見えるようにさせているのが厄介だよな。それに乗ると大妃様とミツキとゼブとアオイとミヤビとか言う四天王の連蔵攻撃が多分コンボで来る。同時に近い四連撃だから、食らったら終わる。それを知っているからか、その攻撃だけは出させないようにもう一人のミツキとやらは深入りした攻撃はしないし、コンボの要になりそうな初段の攻撃をする大妃様とかだけ狙っているからな」
フリヒリムスとラドウルスさんの話がキツイ。
「やはりそうか……。手が出せんな。外側で弱そうなのを狙おうとしたら、いやな気配を感じて辞めて正解か……」
などと背後から変な声がした。
全員がそっちを見ると、何というか兵士達もそう思ったのだが、微妙にインドに似た服装をしていたのだが、金の装飾がついた相当地位の高そうな人物がそこにいた。
たった一人で無造作に立っている。
だいぶ、この手の世界に慣れてきたから分かるのだが、感覚的にはフリヒリムスさんとかカエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスンさんに近い雰囲気がある。
「こ、これは? 」
「ええと……どなたさんで? 」
祝融さんと心の師匠のカルロス一世が問う。
だが、俺達はとても声をかけれない。
雰囲気が違うのだ。
相当な威圧的な気配を感じる。
これは攻めて来た敵の創造主かもしれない。
「なるほど、久しぶりだね。北派が動いていると言う事はそれと関係の深い創造主が動いて当たり前だ。ルドラ……数億年ぶりか? 」
などとエリンギさんが声をかけた。
顔見知りらしい。
だが、返答は違った。
「誰だ? 」
訝し気にルドラと呼ばれた創造主が答える。
まあ、姿がエリンギだもんな、今。