全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十三部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 崩壊 第五章
神子が御堂祐樹の方に静かに一礼すると、それから光の混沌の女神様の方にテレポートした。
まあ、御堂祐樹の家族を守る姿が立派な姿と言えば姿なんだけど、あの手の戦闘屋の神子が御堂祐樹に敬意を示すとは思わなかった。
実際、戦って負けたからこそ、二つの強大な存在の間で必死に双方を守っている事の困難さを理解したのだろう。
「真面目に命がけだと思うがな。不死だが、攻撃を受けるたびの激痛もあるし。ただ、もう一人の姪の吸収攻撃を受けているんだから、結構、食われているのかな? 」
「同じ系統の力だから、祐樹坊ちゃんの身体はエネルギーを吸収しにくいんだとは思うけどね」
心の師匠のカルロス一世の疑問をエリンギさんが答えた。
空を見ると、大体の艦隊はどうやら、撃墜されたようだ。
それでも撤退をせずに督戦隊までおいて、執拗に戦い続けているのを見ると、彼らの上の創造主の戦意は高いのだろう。
ただ、もう一人のミツキさんと獅子の軍団に向かっている軍隊も次々力の奔流で消えていくのと督戦隊も巻き添えでやられたようで、今は散り散りになっている。
その反面、あちこちに破壊された艦隊から離脱した部隊をそちらだけでなく、別の場所に展開させている事から、やはり狙いは光の混沌の女神様なのだと思われた。
「多分、間違いないと思うな」
「おそらくその通りです」
そう声がかかって、その声の方を向くて、こちらにのたのたと歩いてくる御方がいた。
それはフリヒリムスさんとラドウルスさんとドラクネスさんである。
図体がでかいだけあって、遠くから兵士に狙撃されたりしているけど、全然屁とも思っていない。
その代わりにミツキさんにいろいろと身体を吸収されたようで、身体は再生されつつあるが、全員パンチで穴を開けたように穴がいくつか空いているのがせつない。
「やはり吸収されたのですか? 」
言いにくい事を平気で言える涼月東が聞いた。
「大妃様と一緒に戦おうとして、こうなった」
「とうとう、大妃様から相手の餌になるからとっとと出ていけまで言われてしまったし」
「実際、俺達は何しにここまで来たんだろうな」
そうドラクネスさんがため息をつくと、全員が肩を落としていた。
「そう言えば、向こうのミツキさんってどうでした? 」
俺が気になってた事を聞いた。
遠目で獅子の軍団でも外回りで援護の攻撃をしているユイナさんとかは見えるけど、特にミツキさんとか大妃さんとかアオイさんとかは力の奔流で空間が歪められていて見えなかった。
だから、フリヒリムスさん達に確認してみたのだ。
「ミツキ殿だっけ? それが大人になった感じだ」
「大妃様と同じような年齢の姿に見えた」
「え? 」
俺が予想外の言葉に驚いた。
同年齢じゃないんだ。
大妃さんは見た感じ20後半のお姉さんみたいな姿だ。
「多分、それだけいろいろと食らっているんだろうね。ある程度の年が来たら止まると思うから、相当混沌の女神の後継者の少女の魂とかを食らったんだと思う。神子とか言う奴の魂も食らってたし」
「しかし、我々は食べられても年の変化は無かったぞ? 」
「そりゃ、膨大なエネルギーを蓄積させているんだから、ちょっとやそっとじゃね? 」
「中小の力を持つ創造主くらいは俺達はエネルギーがあるのだが」
フリヒリムスさんが悔しそうに反論した。
3つも穴が開いてるし、それはじりじりと埋まっているが。
「あ、ひょっとして、ここに神子がいて俺達と話している時、自分達も吸収されて終わったから、罰が悪くて出てこなかったんですか? 」
などと涼月東が余計な事を言ったら、吹き飛びそうな速度の裏拳がフリヒリムスさんから来た。
この人たち、そういうの容赦無いってば……。
そうしたら、エリンギさんが再生したらしい片手を出して、それを受け止めた。
「一応、敵味方でとりあえず組んでいるんだ。簡単に攻撃とかしないでくれ。人間だと死んでしまう」
エリンギさんがそう警告した。
「無礼な事を言うからだ! 」
フリヒリムスさんが不貞腐れて吐き捨てた。
だが、それで攻撃は終わった。
「あ、ありがとうございます」
涼月東がエリンギさんに頭を下げた。
それでフリヒリムスさんにも詫びをした。
俺も気を付けないとべらべら思っている事を喋っているので、下手したら死ぬなとしみじみ思った。