全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十三部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 崩壊 第三章
「光の混沌の女神様はどうなっている? 」
神子がそう聞いてきた。
「義兄が何とか逃げさせている」
「そうか……時間を稼がないとな……」
そう神子がふらふらと立った。
肉体再生にかなり力を使用したらしくて、疲労が溜まっているようだ。
「いや、逃げてほしい」
使命感一杯の神子さんに俺が直球に話す。
真面目に全力で駄目だったのに、20%も食われて、しかも再生で疲労困憊の状況で餌になりに行くようなものだ。
「餌……なのか……? 」
そう張り付いたような驚いた顔で神子が呻く。
「食べられてしまえば、さらに向こうの姪が強くなってしまうからな」
心の師匠のカルロス一世も同意してくれた。
「どちらかと言うと修二さんの後を追って光の混沌の女神様をお守りした方が良い。修二さんと光の混沌の女神様と神子がいれば流石にミツキさんも手が出せないだろう。それが一番の方法だと思う」
一番良く状況を把握できるはずの一条和馬がそう断言した。
俺もそう思う。
後は御堂祐樹がどこまで、獅子の軍団ともう一人のミツキさんとの間で戦い続けれるかどうかだな。
「そこが問題ですよね」
涼月東がそう呟いた。
「やっぱり、何もしないのか? 」
「俺達には何もできない。どちらも怪物過ぎて、甥しか対応できない。甥ですら、彼女たちの愛する男だから配慮があるので生き続けていられるだけだ。獅子の軍団にしろ化け物だから」
祝融さんの苦い顔に心の師匠のカルロス一世がさわやかに言い切った。
あの怪物の御堂祐樹も愛情による配慮で生きているだけとか、どうにもなんないじゃん。
「まあ、格納庫が使用されなかったら、俺達、あそこで何もせずにゆっくりと結果を待っているだけで済んだんですがね」
涼月東の言葉が身に染みる。
なんで最前線に来なきゃいけないのか。
「いや、しようがいないよ」
などと神無月涼さんが言うのでビビる。
さっきまで遺書を書いてたのに。
後悔してたくせいにぃぃぃ。
俺が喋っているせいか、神無月涼さんが罰の悪そうな顔をした。
「いや、来たのは失敗かもな。どうも、単独で向こうの修二さんとミツキさんと北派のまつろわぬものが動いているだけかと思ったけど、他の創造主も動いているから」
アポリトさんが苦笑しながら、凄い速度でナイフをいくつも近くの建物の陰に投げた。
その瞬間、こちらに出て来て、銃器のようなものを構えようとした兵士の頭に次々と刺さる。
すごい腕だ。
索敵能力が異常だと聞いていたが、なるほど、建物の陰から出てくるのを先に察知して、相手が出て来て、こちらに気が付く前に頭に投げナイフを突き立てる。
陰にいる段階ですでにナイフを投げているから、完全に相手の動きを先に把握しているらしい。
「艦隊を破壊されても、一部の不時着した軍艦から次々と兵士が出てきているみたいだな」
一条和馬が聖樹装兵の胸にある強力なビームシステムを開いた。
それでそのわらわらと出てくる兵士たちが隠れている場所をビームで建物ごと、なぎ倒した。
すごい威力だ。
本来あるはずだった、我々の世界とあちらの世界の戦争になったら、相当やばいんじゃなかったのかと本当に思う。
「いや、まだそれは無くなったわけじゃないから」
そう喋っているせいで祝融さんに突っ込まれた。
まあ、そうなんだけど。
「でも、こっちの話が終わったら、終わりじゃないですか? 」
「二つの世界が合わさるのは続いているんだが? 」
「混沌の女神様なら止めれるのでは? 」
「ああ、そうか」
全ての創造主の主宰神にして、最高の特別な能力。
御堂祐樹が使う時間操作を止めれるのだから、それより上位の能力の可能性もある。
そうであれば、できない事など無いはず。
「なるほどな。そうなると、二つの世界が一つになるのを防ぐためにも君達は頑張らないとな」
「え? 心の師匠のカルロス一世さんは? 」
「私は見守るよ」
などと微笑んだ。
「いや、手伝えよ」
祝融さんがそれで心の師匠のカルロス一世に怒っていた。
「一体になって俺達が盛り上がるって場合は、必ず敵から逃げる時以外は絶対無いよな」
などと叢雲さんが苦笑していた。