全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十三部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 崩壊 第二章
「お前らは、どこかで見た顔だな……」
そう神子が話す。
よく見たら肩のあたりがバクッと服が円形に無くなっている。
俺がじっと見ていたら、それに気が付いたらしい。
「これか? 攻めてきた娘に円形に抉られて吸収された。それで今、身体を再生しているところだ……」
神子が苦しい息で話した。
本当に円形に抉るように吸収するんだ。
食べてるようにも見える……。
真面目に瞳孔が開く。
ちらと見たら、祝融さんから心の師匠のカルロス一世まで全員が凄い顔をしていた。
これはやばい。
本気で相手を捕食しているのとあまり変わらん。
もう、モンスターとか妖怪と同じじゃん。
「どの程度食べられた……いや抉られて吸収されたんだ? 」
「だから、服が無くなっているだろ? 」
心の師匠のカルロス一世の突っ込みに神子が話した。
30センチくらいの円形に抉られるように食われたようだ。
「いや、エネルギーとしたら、どのくらいとられたのか? 」
「……20%くらいかな? 全力でも何とかって感じだから、ここからもう一度戦うのは難しいかもしれない」
神子の苦しい言葉が続いた。
戦闘狂とか聞くが意外と冷静のようだ。
「近くに行ったらそうなったのか? 」
「ああ、接近戦で武器で戦いあっている最中突然にバクッって感じだ」
「まさか、口で食べてきたのか? 」
「いや、突然、何もない処から抉られた。それでエネルギーごと持っていかれた」
「それなら、戦うのも警戒しないと厳しいな」
祝融さんが真面目な顔で呻く。
手が三本ある奴と戦うような感じだ。
「異質な戦い方だね。私らまつろわぬものはストレートに抱き着いてエネルギーを奪うか、ツキヨさんみたいに口から咀嚼するかだが……」
「うおぉぉぉおぉぉぉぉお! 何だそれ? 」
まるで気配を消していたようにエリンギさんがいて話しかけたので、神子が驚いた。
「え? いたんですか? 」
正直、本当に気配を感じないので驚いた。
目の前の激しい戦闘でそれどころじゃなかったのもあるけど。
「他のまつろわぬものは? 」
「全部、状況把握で戦場を飛び回っているよ」
心の師匠のカルロス一世の言葉にエリンギさんが答えた。
ガマガエルのような鬼さんとひょろっとした鬼さんと他にもいろいろいたのだが、ここにはエリンギさんしかいなかったからだ。
「これが……まつろわぬもの……なのか? 」
「私達みたいなのに、会ったことないのかい? 」
「一部だが遠い血は俺に流れていると混沌の女神様にお聞きしていたが、今、初めて本物と会った。戦闘集団と聞くが、まさか……こんなキノコみたいなのとは……」
神子の驚きが止まらない。
「いや、これは身体が削れて削れて、こうなっただけで」
「それで生きてんだから、凄いけどな」
涼月東の言葉にアポリトさんが苦笑した。
「なるほど、血が薄い。そう言う事か……」
などとエリンギさんが呟いた。
「血が薄い? 」
「私らは子供が作れないし、子孫は作れない。まず生まれない。本当にまれに生まれることはあるけど、それはまつろわぬものではめったにない。それの遠い血を引き継いでいるね。その程度だから相手に奪われるのを抵抗できなかったんだ。ミツキ嬢ちゃんの強いエネルギーと物質の吸収能力には抗えなかった」
そうエリンギさんが説明した。
「え? 待って? すると甥は索敵映像で飛び回ってたけど、たまに攻撃されてる以外の場所に移動していることがあったけど……」
「あちらのミツキ嬢ちゃんの吸収能力を自分の身体で弾いたんだろ」
エリンギさんの驚きの見解が……。
何という御堂祐樹の孤独な苦労。
獅子の軍団の混沌の女神様の後継者の少女の魂を奪われない為に、それこそ身を挺して戦い続けているとは。
自然とまた祝融さんが軍人のように御堂祐樹が戦っているあたりに向かって敬礼したので俺達も同じように敬礼した。
何という自己犠牲だ。
「実はすごい奴なのかもしれんな」
心の師匠のカルロス一世の呟きが切ない。