全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十二部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 突撃 第五章
格納庫が激しく揺れだした。
転移するせいで振動を始めたらしい。
これが凄い揺れだ。
大地震でもあるような感じだ。
それは適当に地下に拡げられた格納庫だからこそ、土中から出るにしても、非常に困難なのでそうなると言うのが分かる。
もう無茶苦茶だ。
「凄いね。エネルギー的には混沌の女神がいる主宰者の星に行けそうだ。何という力だ。正直に言うと、これは全力で戦っているツキヨ曾祖母を凌駕するよ」
エリンギさんが驚いていた。
いや、うれしくないんですが……。
獅子の軍団の面々が戦闘したくてたまらないって猛獣みたいな笑顔で笑っているのが怖い。
全員だもの。
「いや、傭兵やってた中東でこんな敵に会ったらビビって逃げ回りそうだ」
叢雲さんが呻く。
「いよいよ、戦闘か」
「即座に戦えるようにしておくか」
「まあ、ここで暴れるくらいしかすることないしな」
などと、創造主の中でも武闘派で有名な大妃さんの部下であるフリヒリムスさんとかは腹が決まった顔をしているが、俺達はそうはいかない。
「あああああああああ、やらかす時の顔だ……」
一条和馬が凄い顔で呻く。
ミツキさんの顔を見て絶望的な表情をしていた。
言われてみれば、ミツキさんの顔が好戦的に微笑みながら、少しいたずらっぽい感じに見えた。
「何をやらかすんだ? 」
祝融さんが一条和馬に聞いた。
「御堂祐樹! ミツキさんを止めろ! これはやばい攻撃だ! 」
だが、一条和馬は祝融さんの疑問を無視して御堂祐樹に必死に訴える。
「やばい攻撃って? 」
御堂祐樹が素で聞いた。
「無茶苦茶する時の顔だ。止めないとやばい」
一回目の記憶がかなり戻っているらしい一条和馬が必死に話す。
「やばいって? 」
修二さんが不思議そうに聞いた。
「一回目と同じなら、敵のミツキさんが狙いにしている者を潰しに行く可能性が高い。相手の狙いを潰せるし、相手の前に立ちはだかれるし。そういう想像を絶する奇襲とか異常に好むから」
「え? まて? どこに出るつもりなんだ? え? ミツキ? 」
御堂祐樹が一条和馬の言葉で思いついたように真っ青になって叫ぶ。
「目標は光の混沌の女神様自身の場所に! もう一人の私が欲しいものを叩き潰してやる! 」
などとミツキさんが叫ぶので、皆の光の迸りの中にいた禊さんが瞳孔が開きまくった顔で動揺している。
でも、獅子の軍団はその攻撃目標を受け入れたらしい。
全員が顔を見合わせて、猛獣と言うよりは虐殺魔みたいな笑みを浮かべた。
「ぴゃあああああああっ! 」
「待て待て待て待てーっ! 」
御堂祐樹と修二さんの絶叫が響く。
たしかに、相手はビビるだろう。
助けに来た連中が助けるはずの御方を無敵の格納庫で踏み潰すのである。
そんなのされたら、発狂するだろう。
でも、同じミツキさんだから、どうなるのか。
そして、救助する相手すら踏み潰しに行くくらいだから、同じ格納庫にいる俺達はどう扱われるかは、もうわかり過ぎるほどわかる。
多分、虫けら以下である。
ちょっと夜に出かけようとして、街灯に集まって地面に落ちた虫のように踏み潰されるのだ。
やばすぎる戦い方に涙が止まりません。
奥で必死に神無月涼さんが妻と子供に遺書を書いていた。
文月家では仕事に行く前に書かされるから、特にいらないのだけど、そういうのが無い家だと辛いだろうな。
格納庫全体に光と雷が迸る。
全てが光りだした。
いよいよ転移するらしい。
御堂祐樹と修二さんは必死に止めようと騒いでいるが、本当に相手にされていない。
家族として、人間……神様……いや創造主だけど……身内として認識されていないような感じだ。
ひでぇぇ。