全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十二部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 突撃 第四章
「じゃあ、皆で行くわよ」
そうミツキさんが宣言した。
それで獅子の軍団の獰猛な殺気がさらに迸る。
禊'(みそぎ)さんも唖然としたように、ペンダントをミツキさんに言われたように皆に差し出したままだ。
そこにミツキさんや大妃さんが凄まじいエネルギーを迸らせながら注入を始める。
アオイさんもミヤビさんもゼブさんも相当に凄い。
そして、それにキョウカさんやレイナさんも続いた。
麗さんまでやっているのを見て祝融さんから嗚咽が漏れる。
本気で行くのか。
その一言だけしか出ない。
御堂祐樹は悲しい顔をしたまんま、ぽつりと立っていた。
家族を守るんだってどこに行ったんだ。
「そ、そうだぞ? お前が指揮するんじゃないのか? 」
「そこの中心にいろよ! 」
ラドウルスさんとドラクネスさんが御堂祐樹にけしかける。
だって、御堂祐樹は獅子の軍団から距離を置いてポツリとして一人でいるから。
「まあ、そう言わないでくれ。息子の許嫁達は戦闘と聞くと三度の飯より好きだからな。もはや、独立して勝手に動いてしまうんだ」
「だから、そうやって、息子を甘やかすから、お前は駄目なんだ。だから、ヒモなんだ」
「いや、お前、止めれるか? 真面目に」
祝融さんの麗さんの変貌に怒り心頭で修二さんを怒鳴ったが修二さんが逆に不貞腐れるように言い返す。
それで祝融さんも黙った。
正直、この異様な殺意とエネルギーの放射で俺達だけでなく、心の師匠のカルロス一世ですら、暗い顔をしていた。
「あれ、下手に前に出ると多分、俺達の身体が四散するくらいエネルギーを迸らせているぞ」
などと、今までずっと黙っていたアポリトさんが呟く。
「どこに行ってたんです? 」
涼月東がそうアポリトさんに聞いた。
「いや、どこか格納庫内でもっとも頑丈で大丈夫な場所は無いかと索敵も使って探してたんだが……」
「だが……? 」
「駄目だ。中にいるときも変な拡張工事とかしているなと思ったんだが、本気で行き当たりばったりで増築している。逆に入口に近いホールのここの方が頑強だと思う。ぶつかり方によったら現状は時間を止めてる為の絶対防御状態の格納庫とは言え、奥だと扉とか変な天井の建築物とかあるから、万が一時間が止まっているのが終わったら、一撃で死にそう」
「やっぱり、適当に拡げてたんだろうな。見ていて、中の構造がそんな感じだったから。設計図なしで拡げているだろ? 」
アポリトさんの言葉に心の師匠のカルロス一世が修二さんに突っ込んだ。
「まあ、戦闘用として作ってないからな。こんな形になると思わなかったし」
などと修二さんが呻く。
さっきちょろちょろしている時に俺も気が付いたけど、確かに適当に作ってある。
何というか、修二さんの性格丸出しで、適当に思い付きで拡げているのがまるわかりの構造だ。
「多分、このまま転移してそのまま突撃して相手がびっくりしたら、その隙に一気に叩くつもりなんだと思う。奇襲としては正しいが、特にこの格納庫の事は使い捨てなんだろうな」
「でも、時間を止めた完全防御状態なんだから大丈夫なのでは? 」
叢雲さんのつぶやきに、神無月涼さんが言い返した。
「いや、こういう時って信じられないことが起きるから、そんなに構造に安定性が無いなら奥には行かない方が良い。本気で碌なことは無いから」
心の師匠のカルロス一世の言葉に誰も否定できない。
本当に御堂祐樹とか修二さん達と付き合うとそういう感じだし、それでずっと苦労してきた心の師匠のカルロス一世の経験に裏打ちされた言葉には逆らえない。
とにかく、ここのホールにいるしかないらしい。
ぶっちゃけ、獅子の軍団が目の前にいるから、最前線なんだけど。
つーっと自然と涙が流れる。
涼月東も泣いていた。
何という絶望感。
心の師匠のカルロス一世すら一筋の涙が流れていた。
どう考えても最後が近いと思った。
そして、ミツキさんや大妃さんが中心にペンダントの光が獅子の軍団全部を包む。
いよいよ、転移が始まった。