全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十二部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 突撃 第一章
禊さんがチョコチョコと格納庫を見て回る。
時を止めた完全防御の格納庫の大きさを見て回っているらしい。
呪具の問題もあって大きすぎると難しいそうだ。
駄目だと良いなぁ。
俺達はここに残ると言うことで。
いくら何でも、俺は非力なただの人間なんですけど。
さっきから、獅子の軍団が凄い殺気と力を迸らせて物凄い。
後継者の少女の魂で連動しているようにも見える。
「それだっ! 長い事、異常な集団トータルでの戦闘力を最大限に生かす攻撃の連携とか不思議に思ってたんだわ! 」
修二さんが叫ぶ。
「ああああっ! そういえば! 」
あの御堂祐樹ですら一緒に叫んでいる。
どういう事?
「なんか知らんが、普通なら一夫多妻でそんなに仲が良い訳ないだろ。それなのに戦闘になったら、最初から計画してたのかってくらい連携すんだよ。それで獅子の軍団とか言われる戦闘集団になっているんだけど、ヤマトの人間で親戚だからとか言うのなら納得するが、それ以外の奴まで見事な連携するんだ。あっちを攻撃されたら、相手のスキを狙って凄いタイミングで別の奴が攻撃したりな。だから、どういう意味でそんな完璧な連携しているのか不思議だったんだ。良く義兄とは話をしていたんだけど、連携の練習とかしてないらしいしな。なのに一つの意志で攻撃しているような組み立てを集団で見せるんだ」
などと心の師匠のカルロス一世が解説してくださる。
なるほど、二刀流とか二丁拳銃も実は左右がバラバラで相手の隙を見つけながら攻撃するならすごいけど、現実はそう言うのは非常に難しくて、やれる人なんて一握りしかいない。
何の相談も練習も打ち合わせも無く、それを現実に集団として出来るなら、これほど恐ろしいことは無い。
そう言うことか、獅子の軍団の最強さって……。
「ああ……そうか、練習してないで連携するって事は攻撃に型が無いんだ……」
涼月東が俺の言いたいことが分かったらしくて、衝撃を受けている。
それは究極の攻撃システムだからだ。
型がなく、流れるように連携して、ただ相手を倒すだけを考える戦闘集団。
「いや、そんなことができるのか? 」
叢雲さんも衝撃を受けていた。
それが、どれほど無理な事かわかるのだろう。
ナポレオンですら、その高度な連携を芸術のように実現できた戦争はほんのわずかしかない。
最後のワールテローなんか、下手したらナポレオンが勝ってもおかしくない状態だったのに、皇帝からナポレオンが降りたことで、部下の将帥たちの戦争も終わり、すっかり訛ってしまっていた。
そのあたりをナポレオンが把握できなかった為に負けた。
それがナポレオンの敗北の理由だ。
それを混沌の女神様の後継者の少女の魂がしているなら、それは出来るのだろう。
「ち、ちょっと待って? えええ? 混沌の女神様の後継者の少女って淡い恋心を抱いてた無垢の少女なんじゃないの? 」
御堂祐樹が納得いかないように修二さんに聞いた。
「多分……俺が知恵を与えて、戦国時代みたいな世界を見ていくことで、いろんな経験を積んで……。その結果学習したんじゃないの? 戦闘集団として……」
「いや、それはおかしい……それはおかしいだろ? 」
段々、御堂祐樹の声が小さくなる。
何と言うことでしょう。
文月家として長い事、傭兵や戦闘集団の戦いの監視をしてきたのだが、そんな中で物凄く強いCIAの工作員とか見てきたわけだが、そんなのが鼻くそみたいな怪物達が目の前にいる。
「殺気が目に見えて、焔のように皆が連携して燃え上がっているとか、初めて見ましたよ」
泣きそうな顔で涼月東が呟いた。
一番泣きそうな顔をしていたのは御堂祐樹だったが。