全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十一部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 先手 第五章
「ちょっと待って? じゃあ、ひょっとして、俺だけの特別な時間を操る力って……」
御堂祐樹が呟いた。
「それに気が付くんだから、頭が良いよな。我が息子ながら」
修二さんが呑気に答える。
「いや、気が付くだろ? 」
「その通り、と言うか多分だけど、全ての創造主は自分の世界を自在に作りながら思うわけだ。失敗した、ああすれば良かった。それで、時間を戻したいとかな。そういう部分の創造主たちの願いと力の集合無意識の中核から多分、お前がそれを奪ったんだ。お前は他人の力を奪う力を持っているからな。多分、お前の根本の幸運のスキルもそれだろうと思う。全ての創造主の願いと言うか希望や幸運を欲しいという部分を、それらの集合無意識の中核から同じように奪ったんだと思う」
「はああああ? 全部知ってんじゃん! 」
「いや、今思い出した。そう言えばって考えていくと、そこに結び付くわな」
「碌なもんじゃねぇな。今頃気が付いても意味ないだろ」
「そうでもないぞ? 多分、元からあった能力にプラスして集合無意識から奪ったのは、そんな古くないと思う。ツキヨ曾祖母とサヨ祖母の最大の真の力は食べる事や戦闘じゃなくて、相手の能力を奪う力だからな。それを血筋として持っているお前は持っていて当たり前の話だ。俺にはそんな全ての創造主の集合無意識なんか繋がりないけど、お前は持っているからな。ある意味、そう言うのを奪い放題になる所はあるも」
「おいおいおいおい、それは凄く凄く大事な話じゃないのか? 」
「だって、今思い出していって、そういえばって思ったんだもの。昔にあったことは忘れる主義だから」
「ふざけんなぁあぁぁ! 」
修二さんの軽さにカエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスンさんがブチ切れる。
「そういうところをヒモと言うのだ! 刹那的に生きているからそうなる! だから、こいつは嫌なんだ! 」
「それだと怪物じゃん」
「間違いなく怪物ですよね」
ドラクネスさんとラドウルスさんが思わず御堂祐樹を見て呟いた。
全ての創造主の持つ全ての力をある意味持てるのだ。
そら怪物だと言うよな。
横にいるフリヒリムスさんがぶすっとした顔になっている。
不貞腐れているように見えた。
「なるほど、最強の旦那だと言う事だな」
大妃さんまでそう満足そうに御堂祐樹を見るので、余計に腹立つのだろう。
「なるほど、それなら、混沌の女神様の後継者になるのも仕方ないのか」
カエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスンさんがため息をついた。
その時にポツリと大妃さんが呟く。
「それにしては、ミツキはそういう相手から能力を奪うというのを一回目もそうだが、見たことないな」
などとミツキさんを大妃さんがマジマジと見た。
それで初めて俺もざわっとした。
御堂祐樹も気が付いたみたいだ。
その言葉のあまりにも大きな意味に。
ツキヨ曾祖母とサヨ祖母の相手の能力を奪う能力を持つのは御堂祐樹だけではないはずだ。
ミツキさんも持っているはず。
そして、ミツキさんには全ての創造主にアクセスできるかもしれない、混沌の女神様の後継者の少女の魂もある。
それならば御堂祐樹と同じ力があっておかしくない。
いや、あって当然の話だ。
俺が喋っているせいで全員が凄い青い顔をしている。
「ミツキ! 相手の能力を奪ったりってあったっけ? 」
御堂祐樹の声が震えている。
「いや、別にないけど……」
「本当だな? 」
「本当だよ」
それで御堂祐樹と修二さんと俺だけでなく、涼月東も気が付いたようだ。
最悪の可能性に。
ミツキさんが持っているはずの能力がない。
それはあるはずのもの。
それが無いと言うことは……分離している方が持っていると言うことだ。
もう一人のミツキさんが御堂祐樹と同じく最大最強の力を持っていると言うことなのだ。




