全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 歪み 第七章
「撤退したな。真面目に……」
「ああ、引いた」
修二さんと御堂祐樹が話し合う。
喜ぶかと思ったら真剣な顔のままだ。
「やっぱり、あの奇麗な義兄は強いのか? 」
心の師匠のカルロス一世が聞いた。
「忠誠心が強い奴は死を恐れないし、自己犠牲も強い。俺は駄目だと思ったら身体が逃げちゃうからな。そういう意味では俺より相当強い」
「まあ、フリヒリムスを一撃で倒したみたいだしな」
「ちょっと、フリヒリムスを迎えに行こう」
「いや、大妃が来るまで待ってくれ。今、起きて暴れられたら困る」
ラドウルスさんとドラクネスさんがそうフリヒリムスさんほ迎えに行こうとした御堂祐樹が止めた。
まあ、せっかく戦いが防げたのに、ここでもう一度ってのは大変だしな。
「北派があんなに復活すると思わなかった。どうも、もう一人のミツキさんってとんでもないくらいのカリスマ性があると思う。石になるという死から、あれだけの数が復活してくるなんて」
「普通は石になって死ぬときは、何か絶望してなるか、それとも自分はここまでと諦めてなるかだからね。それが復活してまでってなるとそうなるね」
エリンギさんの話にガマガエルのような鬼さんも同意した。
「危なかったな」
だが、それを修二さんも御堂祐樹も聞いていないようだった。
深刻な顔をして修二さんが御堂祐樹に話しかける。
「えらく真剣な顔だが、何が危なかったんだ? 」
カエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスンさんが御堂祐樹と修二さんが深刻な顔のままだったので不思議そうに聞いた。
「あの奇麗な方の俺が『一人でいるミツキの為に助けてほしい』とか言っていたら、御堂祐樹はかなりが分離して向こうに行ってたはずだ」
修二さんが真剣な顔で答える。
ああ、そうか。
基本に家族が大事な御堂祐樹だからこそ、一人でいるミツキなんて言われていたら、相当力のある分身が向こうに助けに行ったという事か。
「あいつは、言い方を間違えたんだ。家族であり妹でもあるミツキの為ならどんなミツキでもこいつは動いた。下手したら本人が動いたかもしれん。それだけ大切にしているからな」
修二さんが苦笑した。
「混沌の女神様の忠誠心なんて、まだこいつに心があるかどうかの時代で、混沌の女神様の後継者の少女の時代だからな、そんな忠誠心なんて鉄のゴーレムには無いよ。当時にあったのは、ただただ、混沌の女神様の後継者の少女を救いたいって気持ちだけだ。だから、あいつは俺の側近だった時の忠誠心だけの塊だから、それは思い至らなかったんだろ。危なかったよ」
修二さんは続けて話すが御堂祐樹は黙ったままだった。
「さっきの野郎はどこだぁぁぁぁ! 」
その時ドンと扉を蹴りつけて、フリヒリムスが中に飛び込んできた。
どうやら自分で気が付いたらしい。
心の師匠のカルロス一世がナチュラルにカエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスンさんの背後に移動した。
もちろん、俺と涼月東もだ。
その瞬間トラックに跳ねられたように格納庫の壁にフリヒリムスが叩きつけられる。
「お兄ちゃん、さっきの話って本当? そんなに私が大事なんだ」
そう嬉しそうにミツキさんが御堂祐樹に抱き着いた。
そうか、それで御堂祐樹は黙っていたんだ。
本人が来ちゃったよ。
「く、くぅぅぅ、貴様あっ! 」
格納庫の壁にたたきつけられたフリヒリムスが立ち上がってミツキさんにつかみかかると、今度は別の凄く奇麗な大人の女性に跳ね飛ばされる。
今度は当たり所が悪かったのか、フリヒリムスが格納庫の壁に衝突して気絶して動かない。
「貴様だけで独占するなぁぁ! 」
そう大人の女性が叫んだ。
「だ、大妃様……」
ラドウルスさんが困った顔で見ていた。
どうやら、大人の奇麗な女性は大妃さんらしい。
それらをちょっと呆れたようにアオイさんとキョウカさんとレイナさんが見ていた。