全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 歪み 第五章
「北派の連中はどうしたのだ? 何であれだけのまつろわぬものがいるのに? 」
奇麗な修二さんが修二さんがあっさりと現れた事に動揺していた。
「そら、俺も混沌の女神の側近の暴走による、まつろわぬものの駆逐作戦を阻止した存在だもの。お前と同じだしな。誰も中の自分と話し合いたいと言えば邪魔する奴はいないよ」
修二さんが笑った。
「親父ぃぃぃぃ! 」
御堂祐樹が修二さんの登場に嬉しそうだ。
「それにしても、そっかぁ。道理で混沌の女神様の後継者の少女に対して積極的に動く気持ちが無くなってたが、そう言うことだったのか。道理でそういうのが無いなと不思議に思ってはいたんだが、そういう部分が全部分離してたらそうなるなぁ」
修二さんが困ったように話した。
「貴様が動かないからだろうが」
「そら、その気持ちが出て行ってしまっていたらなぁ。動きようがないし」
修二さんが確かにもっともな話をした。
「貴様は混沌の女神様の側近としての矜持もないのか? 」
「いや、だから、それが出て行ってお前になっているんだろ? 」
非常に複雑な話だ。
まあ心のいろんな部分が分離して別のコピーされたような自分になるという御堂祐樹の話からするとこれはこれで正しいのだろうけど。
「何を呑気な」
「いや、俺は息子は嫌がるかもしれんけど、混沌の女神様の後継者の少女が初めて心を通い合った鉄のゴーレムの魂である御堂祐樹と添い遂げさせたいと思っている方側の心だからな。お前も鉄のゴーレムを守って砕けていく混沌の女神様の後継者の少女の魂に淡い恋心があって、彼女が、それだけを考えてバラバラに消えていくのを見たはずだが? 」
「ええええ? 」
「そんなロマンチックな事を考えていたんですか? 」
「柄にもない事するんだな」
「驚いたな。ちょっと見直した」
などと修二さんの言葉で全員がマジで驚いた。
「まあ、びっくりされてもしょうがないが、そういうわけで、そういう淡い恋がその魂を再度元に戻すために殺し合いして一つになるのはどうもな。こっちのミツキはある意味でそれでもと思っている節はあったが、それは違うだろ。恋が他人の命を潰した結果の成就は間違っていると思う」
「おおぉおおおおおぉぉぉぉおぉお! 」
皆が修二さんの言葉に感動した。
「ふっ、そういうところだ。我ら混沌の女神様の側近たる我々は世界の事を考えねばならない。それは大を助ける為に小を潰すことがあって当然の事だ。それが分からなければ、いや、それが出来なければ世界の主宰者たる立場にはなれない」
奇麗な修二さんが為政者としては正しい事を堂々と話す。
そういう使命感で分離したのかもしれない。
トップに立つものは非情で無ければならないから、それはある意味すごく正しい話なのだ。
「ふふふふふふふふふ、なるほど。それで俺のそういう部分は全く残っていないと言うことだな」
「どういうことだ? 何が言いたい? 」
「ふふふふふ、周りを見ろっ! 皆が俺を見直した顔をしている! そういう冷血では普通の人は動かない! 例えば昔の少女漫画では、良くある描写から、ヤンキーが捨てられた猫とかを雨が降ってて震えているのを助けるのを見て実は優しいんだと恋が花開いたりするのだ。そして、誰しもが悪から純粋な心を見て立ち直る所を素晴らしいと思うのだ! かって昔のおとぎ話などで盗賊が獲物を探している時に目の悪い少女が自分の為の借金で売られる姉を助けてと神社で必死に神様に祈るのを見て、自分たちの奪った財産を目の悪い少女に全部渡して救い、その後は悪事も辞める! そういうのが人間は大好きなんだ! 実は悪い奴ではなく良い奴だったとか言うのが大好きなんだよ! そういう冷徹な思想じゃダメなんだ! 優しさが必要なんだよ! 」
などとバーンと修二さんが叫ぶ。
「そういうとこだぞ? あんたの駄目なとこって……」
「そういうとこだ、ボケっ! 心の中を全部話してしまったら、計算してやってますって感じじゃねぇかっ! 」
「なんで義兄は喋っちゃうかなぁ! それを言ったら台無しじゃん! 」
カエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスンさんとかがため息をつきながら修二さんに突っ込んだ。
確かに、そういう話を説明したら駄目だと思う。