全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第六十部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 歪み 第一章
「ミツキを呼んで欲しい! あんたと一緒にいる方だ! 」
「今はだめだ。後、いずれ混沌の女神様の後継者になられるのだから、それと、いつまでも君にはミツキと呼んで欲しくはないな。せめてミツキ様とお呼びしないと……私もいつものようにミツキ様とお呼びするとしよう」
御堂祐樹の切実な願いを奇麗な修二さんは拒否した。
「お前! ミツキを家族じゃなくするのか? 」
御堂祐樹が激発した。
さらに俺が見るに御堂祐樹の初めて見る姿だ。
マジ切れしている。
ここまで激高するとは。
許嫁として妻として恐れてきたが、家族としては非常に大切な存在らしい。
「いや、当たり前でしょ? 真面目にあのお義父さんは言っている事がおかしい! 」
アオイさんが俺の独り言を聞いていたのか、同じように怒り気味で話す。
なるほど皇家を名乗るもののヤマトは特殊なのだな。
日本の皇家ですら、昔々は子供が天皇になると母親ですら立場が変わる。
親子としての関係はある意味で変わってしまう。
何しろ現人神になるのだ。
次の天皇となる前に真床追衾に包まれるという天孫族の儀式みたいなのをして、ある意味神としての天皇として生まれ変わるような儀式をする。
奇麗な修二さんの見方もそういう意味だろうか?
混沌の女神様の後継者で後を継ぐのだから特別な存在なのだ。
それが御堂祐樹が後継者に選ばれたので、あの性格でそれほど偉大な存在が単なるヤバいだけの存在なのかと思ってしまっていた。
何しろ、御堂祐樹には実際に混沌の女神様の地位になった未来もあって、その世界では獅子の軍団の会議でぬいぐるみが混沌の女神様の地位に就いた御堂祐樹の座席に置いてあって、いなくても誰も騒がないと言う完全にお飾りだったと御堂祐樹の未来から来た本人がそう愚痴るくらいだから、特に俺たちそれは凄く偉大な存在なのに軽く考えすぎていたのかもしれない。
「そうですよね。普通、すべての創造神の主宰者って完全無欠の全能の偉大な存在のはずですからね」
などと俺が喋っている言葉に涼月東が同意して突っ込んできた。
「その通りだ。残念ながら私の息子がその偉大な地位についた時の未来を混沌の女神様の後継者たるミツキ様が未来視で見たら、すごい未来になっていて……」
それで奇麗な修二さんがちょっと動揺したような表情になった。
「あーあーあーあー、そうだよな。威厳もヘチマも無いもんな」
カエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスンさんがそう深い深いため息をついた。
「そうだろう? 君も現在の光の混沌様の側近だというなら、それが分かるはずだ。それでは駄目なんだ」
奇麗な修二さんがそう断言した。
「なんで、娘のミツキにそんな様なんて敬語で話すんだ? ふざけるなよ? これは俺がいろんな世界でやっと得た家族なんだぞ? いくら分離したとはいえ父親がそんな馬鹿な態度はとるなよ! 」
「わかっていないな。その高貴なる存在としての配慮は必要なのだ。君はそういうことができないようだからな。今の混沌の女神様は君を息子のように見ているが、それでは駄目なんだ。神子は神子足るべき存在でないといけない。私の元おられるミツキ様はそれを良く理解しておられるよ。父であっても、その地位についた時には、もはや私の娘とか言う矮小な存在ではないのさ」
切れた御堂祐樹が刀を出した。
「ほう、柳剛流かね。脛切り剣法を使うのか? でも、私は戦う気は無いのだがね。踏み出してきた足を斬ると言うのは特異だけど、それが狙いだと分かってしまえば相当に不利になると思うがね」
奇麗な修二さんがすっと引くような動きに変わる。
「カエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスン! 手伝ってくれ! 二柱かかりなら何とかなる! 」
御堂祐樹が叫ぶ。
「悪いけど、本来の混沌の女神様の後継者様が復活なさるというなら、味方はできんぞ? 」
「は? 」
「当たり前だろ? 別に俺はお前の仲間ではない。混沌の女神様の側近ではあってもな」
「え? 」
カエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスンさんの言葉で御堂祐樹が衝撃を受けていた。
一気にいろんな流れが変わってしまったという事か。
ますます先が読めなくなってきた。