全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第五十九部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 北派 第八章
「で、とりあえず、何が言いたいの? 」
御堂祐樹がぶっちゃけた。
長い間の謎解きは良く分かった。
「なるほど、君らしい。直球だな」
そう奇麗な修二さんが微笑んだ。
その表情は優しかった。
「北派は全部石になったはずだ。死ぬことのできない我らは死をそういうものと認めて、石になって終える。だが、外の気配はなんだ? 大量に北派の連中がいるじゃないか? なんでだ? 誰が彼らを起こしたんだ? まさか修二坊ちゃんが? 」
「いや、私では無いよ」
「まさか……」
御堂祐樹が初めて真っ青になった。
何かに気が付いたようだ。
それで、俺もびっくりした。
「ああ、わかるかい。全ての背後に誰がいたのか。誰が中心で動いていたのか。……さすが兄妹だ」
奇麗な修二さんが信じがたい話をした。
「やはり、もう一人のミツキかっ! 俺や父さんと同じで分離している存在がいるんだな? 」
御堂祐樹が動揺して叫ぶ。
「なんてこった……」
心の師匠のカルロス一世も動揺しまくっていた。
「もう一人のミツキは混沌の女神様の意思を継ぐ混沌の女神様の後継者として責任を負おうとしている。それが本来の道だからね。こちらのミツキが回収に動く前に異世界の混沌の女神様の後継者の魂の方は全て回収したよ。後は君の獅子の軍団だけだ。もちろん大妃を含めてね」
奇麗な修二さんが苦笑した。
「いや、それだと混沌の女神様の後継者の少女の魂を奪い取るために、相当殺しているだろう? 」
「それも、仕方あるまい。ここにある獅子の軍団の魂の全ての欠片より多く必要なのだから」
「それがミツキにとってどれほど残酷な事かわかってて言っているのか? 」
「私の目的は本来の姿に戻すことだ。それはもう一人のミツキも同じさ」
「馬鹿じゃないのか? それぞれの魂は欠片となって新しい魂に含まれて、人間としての別の人生を歩んでいるんだぞ? 」
「なるほど、君は本当に良い子に育ったよね。でもね、これは大多数にとってどうかという話だよ。混沌の女神様の後継者の少女こそ正当で世界の平安にとって一番大切なものなんだ。圧倒的多数の為には涙を呑んで我慢しなければならない部分はあるのだ。勿論、それは私の罪だが。その罪は私が最後に責任を取ろうと思っているよ」
「誰もそんなの望んでないっ! 家族で笑いあって生きるだけで良いじゃないかっ! これならこっちのいい加減な親父の方がマシだ! あんたが奇麗なのは表面だけじゃないかっ! 誰だって生きる権利はあるっ! こちらの獅子の軍団を全部殺す気か? 」
「ええええええええええええええええええ? 」
全員が絶句している。
驚くことに御堂祐樹が主人公をしていた。
そういや、そうやって、後継者の少女の魂を集めていくのは反対していたな。
「君が良い子に育ってくれてうれしいよ。でも、これはもう一人のミツキと私の贖罪であり、混沌の女神様の為の……いや、この世界の為に必要な事なんだ。大事と小事を一緒にしてはいけないよ? 」
「あんたは親父じゃないよ。親父ならこれを小事とは思わない。大事だ。大事なことだ。何も世界を元に戻すだけが正しいのではない。あんたは間違っているよ」
御堂祐樹の追及が止まらない。
「そうか……凄く残念だよ。本当に残念だ。こちらの本当のミツキが悲しむよ。君が味方になってくれると信じていたから」
奇麗な修二さんがそう悲しそうな顔をした。
「全部、私達を殺す気なのですか? 」
アオイさんが真剣な顔で聞いた。
「仕方ないさ。それが本来の道なんだから」
奇麗な修二さんはそんな情の話では折れない。
その奇麗な表情と皇帝のようなきちりとした振る舞いと優しい顔が逆に怖く感じる。
何という事だろうか。
本来なら修二さんのスペックなら怪物でもおかしくない。
あのちゃらんぽらんな性格が邪魔していたということか。