全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第五十九部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 北派 第六章
「それはすまないと思う。混沌の女神様の後継者の少女の魂にまつろわぬものの血を入れる時に、どうしても身内がいない<並び立つもの>の為に兄妹となりたいと言ったミツキ……アトラの言葉を亡くなった君を再生する時に受け入れたのがどうも異様な展開になってしまった。君も混沌の女神様の創造物の魂であり、混沌の女神様の後継者の少女と実はあまり変わらない存在だと言う事に、その時は気が付けなかったんだ。これは私と彼のしくじりでもある」
「いや、確かに俺はこの世界に来た時に、ミツキだったアトラに心を貰ったけど、逆に兄妹で結婚とか無理とか思わなかったのか? 」
「私の方は危惧していたが、すまない」
「つまり、あの親父はいいんじゃねってあっさり受け入れたんだ……」
御堂祐樹の言葉に奇麗な修二さんがコクリとうなずいた。
「ううむ。やっぱり、やっている事自体は義兄っぽさがあるな」
「何にも考えていないところが、いかにもってあのヒモの感じがする」
「まあ、何も考えないでやるのは修二坊ちゃんの昔からの癖だし」
などと、ある意味奇麗な修二さんはとんでもないことを言っているんだけど、あの修二さんと同じ存在だった時の話だと考えると、心の師匠のカルロス一世から祝融さんやエリンギさんもだろうなって感じで納得してしまう。
結構、混沌の女神様の後継者の少女の魂を元の後継者たる存在にしようとして、行い自体は良い事なのに余計な事を蛇足で追加して、その結果どうしょうも無くなっているという部分がなぁ。
「そんな感じだよね。修二さんって」
神無月涼さんが深く頷いた。
「ぶっちゃけ、それで混沌の女神様の後継者の少女の魂を後継者に足る肉体にする過程で、御堂祐樹の方にも同じ措置をしたので、結果として混沌の女神様の後継者になってしまったとか言う、本当に行き当たりばったりな結果になっちゃったって事ですよね」
などといつもの一言多い涼月東がズバリと究極的な話をしていしまう。
そりゃ、混沌の女神様の創造物で魂ができたものが、まつろわぬものとの混血として肉体を得たら、そらそうなりますわねって事だ。
何のことはない。
後継者の少女の魂を完璧な肉体に戻したら、もっと後継者たるべき魂を持った存在が現れてしまったという身もふたもない展開である。
すごく修二さんらしい仕草だ。
「お義父さんが結構、知恵も回るし抜け目が無いのは私もよく知っていますが、それでも、しなくて良い様などうしょうも無い事を行き当たりばったりで流れで追加してしまって、結局は無茶苦茶にしてしまうと言う部分があるのも知っています。だから、その話が本当と言えば本当でしょうが……。ただ、何かそれを証明することとかありますか? 本当に貴方がお義父さんから分離した証拠というか……」
アオイさんがズバリと奇麗な修二さんに聞いた。
というか、結構ひどい事を言っているのに驚く。
いや、まあ、確かにそういう人だけどさ。
「現実は現実だからな」
「ヒモだと俺が酷評する部分だから、現実にあるわけだ」
などと心の師匠のカルロス一世と祝融さんが深く深く頷いている。
「うううむ。証拠か。そこに並んでいる鉄のゴーレムが私を攻撃しないというのはどうかな? 私も分離したとはいえ、彼らと暮らしてきたのだし」
そう奇麗な修二さんが話す。
確かに、それは現実にある事実だ。
鉄のゴーレムは誰も修二さんを攻撃しようとはしていない。
「一つだけ聞かしてくれ。なんで、親父がツキヨ曾祖母やサヨ祖母と結婚しなかったんだ? それなら、自分にもこういう分離とか言う影響が出なくて済んだのでは? 」
「えええと、ちょっと、あの方達と結婚は無理。精神的に無理で……」
あのオシャレでピシッとしていつも微笑んでいる修二さんが御堂祐樹の突っ込みで初めて困った顔をした。
「本物だ」
「本物だよ」
そう皆が囁く。
なんとなく、なんだかんだで、そういう所に修二さんらしさが出ていた。
「いや、それ失礼じゃね? 」
エリンギさんは突っ込んでいたが、そういうとこは、はっきりと対応するのが確かに修二さんである。




