全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第五十九部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 北派 第五章
「ははははは、何が言いたいのか分からないが、私はもう一人の修二さ。そして、考え方はどちらかと言うと混沌の女神様の側近であり、混沌の女神様とツキヨ曾祖母と因縁の解消と和解とまつろわぬものの南派と北派の和解をしたいと思っている」
そう奇麗な修二さんは微笑んだ。
その微笑には優しさがあふれていた。
何という事だ。
本当に奇麗なジャ〇アンなのか?
「君が何を言っているのかはわからないが、私が混沌の女神様の後継者の少女を哀れんだばかりに馬鹿なことをしてしまった。それをずっと後悔している」
そう奇麗な修二さんは俺が喋っている事に反応して後悔したような顔で話す。
「義兄が後悔だと? 反省しているとか言いたいのか、まさか? 」
心の師匠のカルロス一世が驚いた顔をしていた。
「反省だって? 本当に本物なのか? ありえないだろ? 」
祝融さんがそう呻いた。
「いやいや、反省はするでしょ? 親父だって……」
御堂祐樹がそう庇った。
「いや、ヒモは……あいつは謝るけど、すぐ忘れるだろ? こんな古い話をずっと後悔の思いを抱いて、反省し続けるというのは全く信じられないような話だ」
祝融さんの言葉が酷い。
だが、一緒にいた間の修二さんの姿が本当にそうなんで全く否定できない。
「俺が見る限りはそんな感じだな。謝罪はするけど、軽い謝罪で、その後の反省がない。その場限りの謝罪であり、そういう対応が当たり前のような男だ」
カエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスンさんも同意した。
「すまない。そういう反省するとか言う部分は、多分私が持って分離してしまったのだと思う。彼には罪がない。だから彼を許してあげてほしい。私が悪いのだ」
そう奇麗な修二さん再度深く頭を下げてきた。
所作も丁寧でよどみがない。
そして、同じ修二さんだとしても、自分が悪いとか言って他人の分まで被って皆に謝罪するなどありえない。
それで皆がどよめく。
ありえない光景が目の間にあるのだ。
あの修二さんが後悔して謝罪するとか。
しかも、もう一人の自分の事を詫びている。
修二さんは悪い事をしても、まともに詫びれないのに。
「いや、本当に申し訳ない」
俺が喋っているせいか、さらに申し訳なさそうに修二さんが頭を下げた。
それでさらにどよめきが酷くなる。
「でも、それなら、なんで<大いなる口>にお義父さんをさらわせたのですか? 」
アオイさんがもっともな話をしてきた。
「いや、私の分離の仕方が悪かったのか、彼は本当に謝れないし、和解をしようにも、それを茶化す可能性があるので、ここに残られると皆とちゃんとした話ができないのではと危惧したのだ」
そう奇麗な修二さんが話す。
そういわれると、確かに修二さんはそういう性格だから、こちらも何も言い返せない。
「いや、あんた。悪いんだけど、修二坊ちゃんって私が会った時から、混沌の女神の側近としての矜持なんか微塵も持ち合わせてなかったはずだけど。私はツキヨばあさんとサヨばあさんからいろいろ聞いているんだけどね」
そうエリンギさんがちょっと疑わし気に奇麗な修二さんを見た。
「いや、心の奥底にはあったのさ。さすがに混沌の女神様の後継者の少女に知恵をあげるというのは善意だったとしても結果が悪かった。ツキヨさんが混沌の女神様の姉妹にあたることを知って、何とか混沌の女神様の後継者の少女を本来の後継者の位置に戻してあげたかった。だから、自らにまつろわぬものの血を流して娘にもその血が流れるようにして、混沌の女神様の後継者の少女がまた後継者に足るべき存在にしょうとしていたのさ」
「はああああああ? そんな理由なの? 俺、次々と自分が分離して離れたり、変な特性だらけなんだけどっ! 」
御堂祐樹があまりの奇麗な修二さんのぶっちゃけ話に叫んだ。
まあ、自分が犠牲になっているから怒るよなと……。