全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第五十九部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 北派 第四章
まるで中の話がそこまで行くのを待っていたかのように外の攻撃が止まる。
激しい爆発による振動も止まった。
それを全員が唖然として格納庫の中から様子を伺った。
何が一体起こっているのか……。
静かな静かな外の方で、半狂乱になっているフリヒリムスさんの叫び声だけが聞こえて、ドラクネスさんとラドウルスさんが呆れた顔で俯いていた。
フリヒリムスさん一柱だけ騒いでいるから恥ずかしいのだろう。
「誰か、来ますね……」
「ああ」
アオイさんが御堂祐樹を見ると、二人は真剣な顔で外の様子を伺った。
「どいうことだい? まさか、こちらの中を探っていたのか? それにしても、この気配は……」
エリンギさんの声が動揺していた。
ガマガエルのような鬼さんも想像を超えるような事態が起きたというような表情で固まる。
「えええ? 」
その感覚は御堂祐樹も同じらしくて、格納庫の外を見たまま固まっている。
アオイさんも同じくだ。
「どうなんだ? 」
心の師匠のカルロス一世がアポリトさんに聞いた。
空間把握能力などずば抜けているアポリトさんなら分かると思ったのだと思う。
「いや、分かんない。全然、分かんない」
アポリトさんが呻く。
アポリトさんが分からないという事はまつろわぬものが来ているという事だ。
だから、把握する事が出来ない。
皆がしんとして静まり返る。
そんな中、フリヒリムスさんの叫び声だけが響いた。
「なんだ! 貴様っ! どう言う事だ? 何でお前がっ! 」
と叫んだあとに激しい音がして、静かになった。
「一撃だと? 」
「フリヒリムスがか? 」
ドラクネスさんとラドウルスさんが格納庫内で座っていたのだが、思わず立ち上がって驚いている。
「ええええ? 」
「えええ? 」
御堂祐樹とアオイさんの動揺が凄い。
まるで相手に心当たりがあるようだ。
2人とも逆に動揺しまくって口をあんぐり開けたまま固まっていた。
それはエリンギさんもガマガエルのような鬼さんも唖然としていた。
「おいっ! 鉄のゴーレムを動かせっ! 地上戦だぞ? あのフリヒリムスが一撃だ! 最強の怪物が相手だ! こんな異常な力の化け物は見た事が無い! 急げっ! 」
カエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスンさんが叫んだ。
だが、御堂祐樹とアオイさんは目を見開いたまま格納庫の扉を見続けている。
そして、本来なら自分で考えて動くはずの鉄のゴーレム達は全く動かない。
まるで敵だとみなしていないようだ。
「ちょっとぉぉぉ! この異常な強さだと俺だけじゃ勝てない! ドラクネスとラドウルスとか言うんだよな! 手伝ってくれ! まずいぞ! こんな怪物がいるなんて聞いていない! 」
カエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスンさんが叫ぶ。
「待ってほしい。私は話し合いに来たんだ。戦う気は無いよ」
そう声がした。
それはどこかで聞いたことがある声だ。
真面目に良くいつも聞いていた声だ。
それで心の師匠のカルロス一世やアポリトさんまで目を見開いていて固まっていた。
静かに扉が音を立てて開いて誰かが格納庫の階段をコツコツと歩いてくる。
誰もが動揺しまくっていた。
そこに現れた男はピシッと貴族のような黒い金の装飾をつけたような軍服を着て、まさに隙の無い振る舞いをしていた。
その高貴さは皇帝と呼ばれてもいいような所作である。
「やあ、久しぶりになるのかな? 」
そう御堂祐樹を見てほほ笑んだ。
それはまさに王者の微笑みであり、そして愛情が豊かな男の微笑みであった。
「お、親父? 」
御堂祐樹がやっと声を絞り出した。
「そう、もう一人のね」
そう、その男が微笑んだ。
全員が驚いていた。
誰もが黙ってしまった。
御堂祐樹には分離したコピーがいたのだ、だけど同じく創造主であり、まつろわぬものの血を引いている父親に同じようなコピーがいるとは考えもしていなかったのだ。
しかも、これは……。
「綺麗なジャ〇アン」
俺が言わなかった言葉を一言多い涼月東が呟いた。
そう、そこには映画版のジャ〇アンと言うべき存在が立っていたのだ。