全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第五十九部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 北派 第三章
外のフリヒリムスの叫び声と激しい攻撃による揺れは続いていた。
格納庫は完全防御だとしても地上が破壊されて揺れれば揺れるものだし。
そもそも、こんな状況で良くも一人で反撃を続けているよなと感心する。
ある意味、バーサーカーみたいなものなのか?
「あいつは意地になるから駄目なんだ」
「それで大妃様はそこの男を総主として、抑えに使っていた。それもあって恨んでんだ。今は名前を御堂祐樹と言うらしいな」
「いや、だから、覚えてないってば」
御堂祐樹の言葉でドラクネスさんとラドウルスさんが黙る。
何という不毛な話なのだろう。
全然共通の記憶が無いのに、話し合ってもどうしようもない。
だだ、そのせいで話が続かず、空気が悪くなる一方だ。
「派手な攻撃と精神攻撃は続けていますけど、意外と敵の数が少ないんじゃないかと思いますが……」
アオイさんがエリンギさん達に話す。
「多分ね。元々、北派って絶えたと思っていたから」
「不死じゃねぇのかよ」
「だから、死として石のように眠るわけだ。延々とね。何しろ、馬鹿みたいな年月を不死で生きるのに、何の目的も無いからね。創造主だったら、エネルギッシュに世界の構築とか自分の眷属とか生み出して生きていくけど、私らは異様な力はあるけど、ただ生きているだけなんだ。だから、あんたらと混血になって私らに子供や孫が出来ていると言うのは本当に嬉しい事なんだ。種として子孫を残すことも無い、ただ生きているだけって事だからね」
「つまり、お義父さんはそもそもそう言うまつろわぬもの達に道を作っていたわけですか? 」
アオイさんが冷静に突っ込んだ。
あれ?
言われてみれば……。
ひょっとして良いことしてんのか?
修二さんは?
「あのヒモが、ンなわけ無いだろ」
祝融さんが忌々し気に話す。
精神攻撃もあるんだろうけど、祝融さんの恨みが積もった怨念が出てきていて困る。
「え? 大体の事を知っているんじゃないの? 真面目にエリンギさんとかさ……」
御堂祐樹がいきなり突っ込んできた。
それは確かに言えている。
どうやら、修二さんも関わっていて、ツキヨ曾祖母様が中心近くに居て、それで混沌の女神様も敵対しているのかも知れないけど関わっていてって事なのか?
という事なら、ほぼ全貌を知っているんじゃね?
「まつろわぬもので深く深く宇宙全体の集合無意識に入り込むと深淵の深淵とも言われるべき存在になるんだ。だからまつろわぬものって難しいんだ。さらに、私達の混血って……それを超える難しさがある。人間達の集合無意識も関わるのだから、あんたもいろいろと多重人格が力を持って厄介な事になったんだろ? 」
エリンギさんが本当に困ったように御堂祐樹に話す。
「それは……<不幸を分かち合うもの>とかの話ですか? 」
アオイさんが聞くとエリンギさんが頷いた。
「どう言う事だ? 何の話だ? 」
カエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスンさん突っ込んだ。
「いや、俺っていろいろと分離してコピーみたいな別人格が暴れたりしてただろ? 意識して分離させている時もあるんだけど、勝手に分離する時もあってさ。そんなので出て来た俺の分身なんだけど……」
「は? 」
「なんだそりゃ? 」
御堂祐樹がの言葉にドラクネスさんとラドウルスさんがドン引き。
「あれは、まつろわぬものと混血だから起きていたのか? 」
カエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスンさんが少し驚いていた。
「という事は旦那様以外にもそういう存在がいるって事ですか? 」
アオイさんがそうエリンギさんとガマガエルのような鬼さんに聞いた。
だけど、二人のまつろわぬものは青い顔をして黙ったままだった。
雰囲気から余程やばい話らしい。
何、この厄介な話。