全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第五十七部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 円卓騎士 第七章
「ふはははははっ、流石だ! 異物よ! 貴様だけは我らのような創造主に足りえる存在では無かった。それゆえの行いの悪さを許して使っていた大妃様にお前は裏切りで答えた! 大妃様がああなったのもお前のせいだ。だからこそ、今、ここで貴様を倒す! 」
フリヒリムスが一面六臂の姿で黄金の剣を全ての手に持って、上空にいる御堂祐樹に肉薄した。
反対に半身を斬り取られたドラクネスさんは下に落ちていく。
「ま、待てっ! 」
流石円卓の騎士と言うべきか、それほどの損傷を受けて落下していながら、ドラクネスは冷静にフリヒリムスを止めようとしていた。
「そうだ、ちょっとこれだと話が違うぞ? 」
落ちていくドラクネスさんが止めようとしたのを見て、ラドウルスさんも必死に声を上げ始めた。
「何を貴様ら! 大妃様と我らを騙した奴だぞ? 騙されるな! 」
フリヒリムスが絶叫を上げて御堂祐樹に黄金の剣で斬りつける。
手が6本あるせいか、二刀流より複雑な動きをしていた。
六刀流になるのか?
驚くべきことに二刀流が流行らなかった理由はやはり二刀あっても結局本当に使用するのは一刀になってしまうからだ。
二丁拳銃とか言うのも西部劇なんかでありそうだが、実際は片方の拳銃を撃ちきったら昔の拳銃は排莢と銃弾を詰めるのに時間がかかるから、それの予備扱いと言うのが実は本当の所なのだが、フリヒリムスの剣はまるでそれぞれが意志を持ってバラバラに動いているように見える。
「六臂を完全にコントロールしているように見えるな。やはり別格だ」
一条和馬が呻く。
実際に愛染明王型聖樹装兵を使用しているから、六臂の使い方の難しさを良く知っているという事か?
だだ、どうも逃げるに特化していると言われているだけあって御堂祐樹の避け方も普通じゃなかった。
あれだけ複雑な動きの六臂の攻撃を綺麗に避け続けている。
「辞めるんだ! 巻き込まれて斬られたドラクネスも止めていただろう! 」
それで、このままではとラドウルスさんが二人の間に入る。
「貴様っ、邪魔をするなぁ! 」
フリヒリムスが絶叫した。
だが、やはり仲間を斬るわけにいかずギリギリの部分でラドウルスに対して振り下ろした黄金の剣を止めたように見えた。
見えたんだけど……。
「あ……」
「えええ? 」
御堂祐樹が呻く。
そして涼月東もその御堂祐樹のナチュラルな動きが見えてしまって絶句していた。
ぶっちゃけ、御堂祐樹が止めていた黄金の剣に当たるようにラドウルスをトンと押していた。
ギリギリで止まるはずの黄金の剣は綺麗に袈裟斬りに上半身から深々とラドウルスを心臓の辺りまで達していた。
「ど、どうして? 」
御堂祐樹が絶句する。
それをナチュラルにやった本人が一番動揺している。
どうやら、本気で無意識にやっちゃったらしい。
「ああ、混戦とかになると普通にうちの流派ではやっちゃうからね」
「教科書通りの動きだよ」
などとエリンギさんとガマガエルのような鬼さんが納得のような微笑みを浮かべた。
いや、それはどうなのか。
せっかくの話し合いのチャンスが駄目になってしまった。
そして、同じようにフリヒリムスも動揺していた。
止めるはずの黄金の剣が致命傷のような傷をラドウルスに当ててしまったのだ。
「ぐはっ! 」
ラドウルスは血の塊を吐き出すと下に落ちていく。
「いや、か、身体が動いちゃってぇぇぇぇ! 」
御堂祐樹が動揺していた。
真面目に話し合うつもりだったらしい。
フリヒリムスも素直に剣を振らなかったら、こんな事にはならなかったのに、自分もその惨劇に関わっちゃったから動揺している。
それでも、双方の手違いもあるのだから、まだ話し合いが出来たはずだった。
腐っても創造主に近い円卓の騎士なら即死と言う訳では無いし。
と思っていたら修二さんが「ふはははははは、これで一対三だな」と叫んだ。
だまし討ちしたって発言しているようなもんである。
余計な一言を言わなくても良いのに。