全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第五十六部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 恐るべし予言 第七章
「待った」
修二さんが手を上げた。
「なんだい」
ガマガエルのような鬼さんがため息をついた。
「いや、ちょっと考えさせてくれ」
「考えようが何しようが戦うわけだけどね……」
修二さんのあがきにガマガエルのような鬼さんが呆れた。
時間稼ぎをしているんだろうか。
最後まであがくなぁ。
「そろそろ良いかい? 」
「待った」
ガマガエルのような鬼さんがそろそろ戦おうとしたら、また修二さんが止めた。
「なんだい、相撲の待ったかい? あれは本来、立ち合いの時に息の合わない場合使うんだけど、制限時間があるのは何度やると相手の戦う気持ちを削ぐからね」
何故か相撲を知っているエリンギさんの解説が鋭い。
まあ、ヤマトと日本の源流は同じと言うから、それでかもしれんけど。
どちらにしろ、それが狙いでやっているのが本当なのは修二さんの苦々しい表情でわかる。
「なんで……なんで、あんたは強いのに、そんな小技ばかり使うんだ? 」
カエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスンさんが呆れ切ったようにはき捨てる。
「うちの流派の技だから」
修二さんが臆面もなく話す。
もう武術じゃねぇよ。
単に相手の隙を誘うだけじゃん。
「兵法と呼んでもらいたい」
などと修二さんが宮本武蔵のような言葉を話す。
佐々木小次郎との対決は実は佐々木小次郎が凄い爺さんなのに一人で来たのに、武蔵は弟子を一杯連れていたとかで、佐々木小次郎を倒した時に息があるのに気が付いた弟子たちが寄ってたかって殺したとか小倉藩の記録には残っている。
まあ、剣術で無くて兵法だと言うのなら、それは正しい行為になるからなぁ。
「佐々木小次郎さんも良く分かんない人で師匠が小太刀の流派の達人で、何で弟子が長刀を使うのか良く分かんないんですよね。小太刀の流派で長刀を使用って、はっきり言って技の技術とか全部違うのではと言う」
涼月東がそう突っ込んできた。
「それを言ったら宮本武蔵も謎が多くて五輪の書とか芸術品を大量に残しているので実在しているのは間違いないけど、同族で同時期に六三四とか同名が三人くらいいるんで、その人達の行跡が一つになったのではって説もあったり。記録が少ないんだよね」
俺もそう話す。
「延々とうんちく話になってんじゃん。さっさと戦えよ」
そう祝融さんが容赦なく話した。
「いや、これはうちの流派の技だから」
「雑談やって相手の隙を見ての攻撃が流派の技とか、武術をしているものからしたら噴飯ものだろうが? 」
修二さんの反論に祝融さんがキレる。
どっちかってーと、武術って言うより喧嘩に近い戦い方だよな。
文月家の親戚でヤクザにも平気で勝っていて恐れられた人がいるけど、その人の技が相手が胸倉掴んで引き寄せられた瞬間に、相手の死角を利用して膝が弱い位置から皿狙いで鋭い蹴りを打ち込んで足を折るってのが得意な人がいて、その人はワザと相手との罵りあいから胸倉掴まれに持っていくのが上手かったなぁ。
「それが極意だよ」
修二さんがそう言い切る。
「必死だな」
「とにかくいつも隙を見せるの待っていると言う感じだ」
一条和馬も叢雲さんも呆れ気味だった。
「ぶっちゃけ、直接戦うにしたら、単純に相手の位置が低すぎるんだ。柳剛流を俺も使うから分かるけど、低い位置からの脛斬りを狙う動きとおなじく、身体を四つん這いのように異常に低くしているガマガエルのような鬼さんだから戦いにくいんだよ」
御堂祐樹が教えてくれた。
「なるほどガマガエルみたいに這いつくばったような位置で刀を振るうってそう言う意味なんだ」
「柳剛流も低い位置から相手の脛を斬るから、相手は受けにくいし攻撃しにくいだろ? 刀の斬りあいにしろ、流派にしろ、相手が低い位置だと狙うのって非常に難しいからな。そういうのに特化した攻撃をされると大変なんだよ。さらに、あの感じだと背中になんか埋め込んでいるだろ。亀が攻撃で足狙いで刀を振るうって考えれば分かる。甲羅を刺しても跳ね返るし、弱い足元ばかり斬りこまれるようになる」
御堂祐樹の言葉に納得がいった。
修二さんも呑気じゃなくて、必死だったんだ。