全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第五十六部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 恐るべし予言 第一章
「ああ、これだと駄目なのか? 」
カエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスンさんが格納庫で使っていた防御陣を展開してから呟いた。
足元をじっと見ているから、どうも敵は下から来るらしい。
それで流石の実践慣れしているのか、その防御陣を拡げて球体にした。
「これだと、防御が薄くなるんだがなぁ」
などとカエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスンさんが呟いた瞬間に足元に何か衝撃が走る。
防御陣が球体のせいか揺れて、持ち上がった。
何らかの攻撃を受けたらしい。
「なるほど、他所の創造主か。やるねぇ」
そうしわがれた声がした。
目の前の土がボコボコと掘り返されて、そこにガマガエルみたいな姿に見える鬼が現れた。
どうやら、地中を掘って移動できるみたいだ。
「おおおっ、これも鬼の姿か」
叢雲さんが感心している。
どうせ、これも別の姿なんだろうけど、確かに異様ではある。
「なんだい。そのみっともない姿は? 」
そのガマガエルのような鬼はエリンギさんを見て失笑した。
「いやいや、削られちゃってね。さすがは祐樹坊ちゃんだよ」
「あんた、戦闘の時まで孫みたいなもんだからって情でもかけたんじゃないのかい? 」
「いやいや、そんな事はしてないけどね。さすがは後継者に選ばれただけはあるって事さ」
「まあ、サヨ婆様も強さは認めていたらしいからね。一度は引き分けたそうじゃないか? 大したもんじゃないか。そこまで強くなるとは思わなかったよ。そもそもあんたは本体で無いのにねぇ」
などとガマガエルのような鬼は御堂祐樹をちらと懐かし気に見た。
「いや、初めて会ったのでは? 」
「赤ちゃんの時に実は会ってるよ」
御堂祐樹の言葉に修二さんが答えた。
流石に赤ちゃんの時は覚えてられないよね。
「まあ、でも殺気は覚えているだろう? あたしが赤ちゃんだったあんたを試して殺気を迸らせたら、まだ赤ちゃんのあんたは笑ったんだよ」
そう懐かしそうに話す。
いやいや、赤ちゃんに殺気を迸らせるとか、それは違うのでは?
赤ちゃんになんてことをするんだろうか。
「ああ、奥の院に目を付けられるとそう言う事しますよ」
「そんな感じで教育してくるんです」
「赤ちゃんにですか? 」
キョウカさんとレイナさんが微笑んで話すので、俺がドン引きして聞いた。
「文化が違うんじゃないですかね? 」
涼月東が俺に話す。
「強くなければ生きている意味は無いんだよ。存在する意味が無いんだ」
などとガマガエルの鬼さんが凄い極論を話す。
どう考えても、何か違う。
「だから、獅子の軍団とか言われて調子に乗っている、うちの後輩たちに言うよ。私は御堂祐樹と一騎打ちをしたい。どのくらい強くなったか見てみたいからね」
そうガマガエルのような鬼が笑った。
「ああ、そう言えば私もちゃんと一騎打ちしたかったね。それでここはあんたが戦えるようにサヨ婆さんがしているのか。サヨ婆さんも孫のあんたともう一度戦いたいらしくて、混沌の女神様の力をある程度除去している。時間を操作する力は戻せないと思うけど、それ以外は本気を出せると思うよ」
そうエリンギさんが笑った。
「じゃあ、父から」
そう御堂祐樹が何のよどみも無く、平然と修二さんを前に突き出した。
「は? 」
「え? 」
皆が驚く。
性格が変わったんじゃなかったのか?
「だって、力試しなんてしても仕方ないし、順番で言えば父からするのが普通でしょ」
などと御堂祐樹は苦笑した。
変わってない訳では無いけど、意味の無いとこで力を無駄にしたくないと言うのが凄く分かる表情をしていた。