全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN第五十五部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 再会 第七章
それだけの攻撃があったのに、全然戦闘態勢にならない。
ただ、笑っているだけだ。
実戦になれすぎだろ?
「いや、奥の院では普通に怠けていたり、ちゃんとしていないと、普通にああいうのが飛んでくるから」
「これ、普通に投げナイフですよね。日本の古武術の棒手裏剣の簡素版に見えますけど、結構重いので深く刺さると思うんですが……」
涼月東がハンカチでそれを持ち上げた。
「何か塗ってあるな」
「毒ですかね? 」
俺と涼月東が会話しながら、ちょっとドン引き。
これだと真面目に下手に刺さると致命傷だし。
「現状、獅子の軍団は誰と誰がいるの? 俺達のいた世界はサヨ祖母やツキヨ曾祖母に守られていないから、誰もいないって事だよね」
「ええ、そちらの世界のはこないだ解かれた麗さんと女媧様だけかな? ただ結局、サヨお婆様かツキヨお婆様が混沌の女神様の力を排除したら記憶は戻るけどね」
レイナさんがそう御堂祐樹に聞かれて説明した。
「つ、つまり、麗を関わらせなければこんな事にはならなかったという事か……」
祝融さんの絶望的な顔が凄い。
「でも、記憶が戻ったおかげでもやもやしたのは無くなったから」
などと麗さんが凄い笑顔で答えるので、祝融さんが死にそうな顔になっている。
御堂祐樹とイチャイチャしているし、ショックが大きいんだろうな。
「祝融さんはこんな感じの人じゃ無かったよね。お義父さんみたいな人じゃなかった? 」
などとアオイさんが呟いた。
「まあ、前はお祖父ちゃん、親子三代で馬鹿なこと一杯してたよな」
などと修二さんも苦笑した。
「じゃあ、サヨお婆様が来たら、混沌の女神様の力を排除して貰ったら、祝融さんも元に戻るんじゃないの? 」
などとアオイさんが笑った。
「そうだね。そうした貰おう」
そう麗さんが答えたら、祝融さんが見た事も無いような顔でぞっとしていた。
たとえ、それが偽物の新しい性格だとしても、それが無くなって別人になって、自分が大嫌いなヒモ呼ばわりしている修二さんとそっくりの人間……神様か? になってしまうと言うのは凄い恐怖なんだろうなとしみじみ思った。
祝融さんが真っ青な顔で崩れ落ちた。
「前に戻るだけなのにな」
などと修二さんがトドメを刺した。
えげつない。
「アマゾネスは? 」
「ツキヨお婆様の提案で、混沌の女神様の力の排除はしてないから、一部は記憶があると思うけど、こちらには関わって来ないと思う。旦那様が現れるまではヤマトとは相性が悪かったからね。それはそのまま今はあるし」
「下手に近づくと戦争になるから、どうしても後回しになっちゃうからね」
御堂祐樹の言葉でキョウカさんとレイナさんが答えた。
いろいろと多岐に渡って婚約者がいるから大変と言えば大変だな。
「となると、ほぼヤマトだけか? 」
「いや、ゼブさんもいるし、龍女さんも燐女さんもいるよ。でも奥の院とは相性もあるから、ゼブさんだけ今回は参加している」
アオイさんがそう答えた。
「とりあえず、ミツキとか戻ってくるまでに一戦ありそうだよね」
などとキョウカさんが刀を抜いた。
何か異様な気配があちこちからする。
奥の院の鬼師団はここで再度一戦するつもりらしい。
「まあ、面子もあるからね。私みたいに完全に敗れちゃうと応援に回るしかないけど、そうじゃないなら決着はつけないとね。サヨ婆さんやツキヨ婆さんに会わせる顔が無いし」
そうエリンギさんが笑った。
心の師匠のカルロス一世がカエサル・アエリウス・アウドニア・アウレリウス・エクセニウス・アウレウス・クトゥルスンさんの背中に移った。
もちろん、俺達も同じように移動した。
自分の身を守る為である。