第二十一部 第七章 対決
「おお、やっと来やがったな」
雛が肉食獣のように飛んできた聖樹装兵を見て笑った。
「おいおい、どいつが<終末の子>さんだい? ハニーが会いに来たのに何やってんだ」
えっ、だれがハニー?
思わず、聞き返してしまいそうだ。
恋と紅葉が着装を解いた。
「なんだい、恋と紅葉じゃないか。何してんだ、こんなとこで」
「いや、その? 」
「えーと」
恋と紅葉がモジモジしてる。
その様子を見て、雛が察したようだ。
雛の顔が憤怒に染まる。
「チッ、馬鹿な奴に手を出されたね。あんたらの為にも潰しとかないと駄目だわ」
吐き気を催すように雛が言い捨てた。
「はあ? ちょっと待ってよ! 」
「大体、一夫多妻だか知んないが、あちこちに許嫁作ってる糞野郎なんか、最低だろ」
雛が吐き捨てた。
「むぅ、一理あるなぁ」
俺が呟きながら、聖樹装兵の着装を解いた。
「ほー、お前がカスかよ」
雛が笑いながら言った。
「はい、カスです」
「ほー、ヒモなの理解してんだな」
「大丈夫、ちゃんと俺の首に巻きついてるから」
「なんか、つまんない事言うねぇ」
雛が凄い殺気を出した。
まだ聖樹装兵に乗ったままのカルロス一世とダグダ師匠が身構えるほどだ。
「ちょっと、あの子の殺気に気を付けて。あれはあれで武器だから」
恋が警告してくれた。
「誰も彼もがあんたと許嫁になるのを喜んでると思うなよ。虫唾が走る」
ギリギリと雛がこちらを睨んだ。
なるほど、殺気に何かを織り込んで、相手の動きを止めてる訳か。
残念だけど効かないよ。
アオイやミツキのカマキリの目でコロスを小声で繰り返す精神攻撃はもっと凄い。
慣れって怖い。
最近は皆がカマキリの目になって来たから、怖くてしょうがない。
それを毎日続けてる俺からしたら、こんなものたかがしれてる。
「ほぅ、笑うとはなかなか根性あるじゃねーか」
思わず、俺の顔に笑みが漏れたようだ。
雛が勘違いして笑ってる。
「分かるわー。慣れてんだよなぁ」
カルロス一世の俺への一言が胸に刺さる。
お互いに分かっちゃうのが辛い。
だって、立場が同じだもの。
「何が分かるってんだよ」
「女を侍らせて良い気になってる。いや、向こうの感覚からすると一夫多妻ってそういう感覚だよね」
俺が雛に言った。
「はあ? それ以外に何があるってんだ」
カルロス一世も聖樹装兵の着装を解いて熱い涙を流してる。
俺も気が付いたら、涙が流れてた。
「何、二人で泣いてんだよ! 」
雛が叫んだ。
せつない。
今なら分かる。
一部で唾棄すべき展開であるハーレム展開だが、その中で本当に好きな人を一人だけ選ぶ。
元居た世界なら、それを選んだ場合、他の女の子は泣いて諦める。
でも、それがこちらの世界の場合、殺し合いになる。
生き残った奴が全部持っていけばいい訳だ。
そりゃ、女性が弱けりゃ良いけど、強い場合どうするのか。
龍女さんは蒼穹船で大陸を灰に出来る。
アオイなんかテューポーンを操れるようになってしまったから、星ごと破壊すらできる。
怖すぎで一人なんか選べない。
そもそも、良く考えたら、何で俺がモテるのか良くわからん。
自慢じゃないが、中学生やら高校生で付き合った奴なんかおらんと言うのに、どうしてこうなったのか。
なんか、そんな現実なのに、女を侍らせて良い気になってるとか言われると、そりゃ涙も出るし。
とりあえず、戦わないとしょうがないので、轟天を抜いた。
ブックマークを本当にありがとうございます。
読んでいただいて、本当にありがとうございます。