第二十一部 第六章 雛(ひな)
遠目に見ているヤマタノオロチの様子が変だ。
どう見ても血しぶきを上げている。
「様子がおかしくないか? 」
俺が向こうの様子をうかがう。
「どういう事だ? それほどの奴が来ていると言うのか? 」
横でアンナが驚いている。
「何か恐ろしく強い奴がいる。行った方が良さそうだ」
俺が前からの殺気に驚いた。
「え? でも、待った方がいいんじゃないの? 」
ミツキが言った。
「いや、かなりやばい奴だ」
俺が真剣に言うとミツキが黙った。
「どうする、聖樹装兵で行くか? 」
カルロス一世が聞いた。
「そうしましょう。とりあえず、ミツキとアオイはここで皆を守って」
「分かった」
俺とカルロス一世とダグダ師匠と龍女さんと恋と紅葉が着装した。
「うん、聖樹装兵じゃないね。単純に個人で戦ってるみたい。異常だな、この強さ」
ダグダ師匠がレーダーモニターを見ながら唸った。
後ろで、一部えくすかりばぁ君がと騒いでる許嫁の数名は見て見ぬふりをした。
とりあえず、聖樹装兵ですぐに飛んで向かう。
近くに行くとヤマタノオロチの首のいくつかがズタズタにされてる。
どう見ても普通じゃない。
ヤマタノオロチを斬馬刀みたいなでかい刀でズタズタにしてる。
身長は百九十センチ近い、しかも凄い筋肉だ。
ウェイトリフティングでもやってそうな感じだ。
相当重いはずの斬馬刀を平気で竹刀みたいに振り回してる。
顔も傷だらけでスカーフェイスのウィリアム少佐に負けるとも劣らない。
問題は女性なんだが。
何だろう?
超人ハルクの女性版か?
「かーっ! 弱すぎんだよ! 糞蛇が! 」
あらあら喋り方も斬新。
まさか、これが修羅トップの方だろうか。
それなら、気絶しようかと思うんですけど。
あ、でも、ヤマタノオロチは修羅側だっけ?
良かった、許嫁で無かった。
思わずほっとしてしまう。
「あ? 雛だ」
恋が驚いた。
は?
雛?
あらあらお可愛い名前だ事。
「名前と姿が違うくね? 」
「ああ、産まれた時に凄く可愛かったらしくて」
ああ、いるなぁ。
親父の友人にも身長百九十センチ近くて、ヤクザみたいな顔してて、フランケンシュタインみたいな感じだけど、親が赤ちゃんの目がつぶらだから瞳って名付けたんだよな。
名前を付ける時は子供が可哀想だから考えないとって、親父が余計な事言っていた。
「おらおら、ひびってんじゃねーぞ! こらぁ!」
斬馬刀を雛が振り回すので、ヤマタノオロチがひびって逃げてる。
「物凄い言葉遣いだな」
俺が引き攣った笑いを浮かべた。
「すげぇな。これはこれで」
カルロス一世が呆れたように答えた。
「……えーと、許嫁だよ? 」
恋が異様な事言った。
は?
何ですと?
「あの人、あっちの世界の旦那様の許嫁だよ? 」
紅葉も頷いた。
「はぁぁああああああああ? 」
どういう基準で、あの親父は許嫁決めてんだよ!
読んでいただいてありがとうございます。
どうか、見捨てないで読んでくださいませ。