第二十一部 第二章 ホアン
ふらふらと甲板に出るとカルロス一世をはじめ全員がそこにいた。
「おう、おつかれさん」
カルロス一世が笑った。
「お前、昼までするなよ。音とか声とか聞こえるんだからさ」
和真が呆れてる。
「だって、逃げようとしたら、えくすかりばぁ君が叫ぶから、皆、起きちゃったんだもの」
「はっ、お前は良いよな。相手がいるしな。何も出来ない俺達はどうするんだよ」
和真が愚痴った。
「いや、これは心の救いだぞ」
カルロス一世が答えた。
「一人寝万歳! 」
クニヒト大佐も叫んだ。
「俺も、ちょっと、そういう元気は無いわ」
アポリトも寂しそうだ。
「ええ? 何で? 」
「もうすぐ、ヤマトに着くから、すぐ分かる」
クニヒト大佐の顔が凄い張り付いたような笑顔だ。
「人生、経験だからな」
カルロス一世も目が優しい。
こいつらなんか計画してるなと思ったが、仲間が増えるならグットジョブ。
思わず、親指立てて、突きだしたら、クニヒト大佐もカルロス一世も凄い笑顔だ。
猛獣の笑顔とはこういうのを言うのだろう。
流石、同じ立場だ、アイコンタクトとジェスチュアが通じるって素晴らしい。
和真も来年にはパパだな。
十人はいけるんじゃね?
仲間が増えるって素晴らしい。
「やっと、出て来たようだな」
海の方から声がする。
甲板を見回すが誰もいない。
「は? 誰? 」
「ふふふふふふふ」
笑いながら、俺達のいる甲板の海側からぴちゃりとタコの足みたいなものが甲板の上についた。
「タコ? 」
俺が不思議に思ってると、そのタコの足の上半身が出てきた。
まさかの、まさかのホアンだ。
「ホアン? お前生きてたのか? 」
「ははははは、当たり前だ。俺がそう簡単に死ぬものか」
「って、何であんた下半身がタコになってんだよ! 」
和真が叫んだ。
まあ、タコは無いわな。
それより、何だ、このデジャブ。
どっかで見たパターンかと思えば、ファウロスか。
「? 誰だ? ファウロスって? 」
ホアンが聞いてきた。
そういや、こいつ人の心が読めるんだった。
「あああああ! 俺もどっかで見たと思ったんだよ! 」
カルロス一世が手を叩いて言った。
「あいつ、テーラで大丈夫なんだろうか」
アポリトが懐かしいものを見るような目でホアンを見た。
皆でほっこりした。
「誰なんだよ? なんでほっこりするんだよ!」
ホアンがキレてる。
「いや、まあ上半身がヴァンパイアで下半身がゾンビの奴だ」
俺が答えた。
「どんな奴なんだよ! 」
「いや、お前が言う? 」
「馬鹿、これはドクトル・テスラと言う、天才科学者が作った神族の細胞を作った生物兵器なのだ」
ホアンが胸を張る。
「ほほう、別にタコである意味あんのか? 」
「知らん」
「遊ばれてんじゃねぇ? 」
「いや、あの人は俺を助けてくれた素晴らしい人なんだ」
むぅ、愚直に助けてくれた人を信じるところがファウロスそっくりだな。
さらに、皆でほっこりした。
「いや、さらにほっこりされても困るんだが」
「いや、あいつは俺のライバルだからな」
「ライバルだと? 」
ホアンがじっと俺を見て聞いた。
「……」
「どうした? 」
「まわりの奴がしきりとア〇ルオナニーとか言ってんだが、何なんだ? 」
「ファウロスの別名さ」
「どんな奴なんだよ! 」
ホアンが叫んだ。




