全部社会が悪いんやっ! ONCE AGAIN 第四十八部 文月凪(ふみつきなぎ)視点 敵の敵は味方 第二章
「そもそもそういういろんな魅力的な彼女がたくさん出てくる漫画とかって、その中の一人を選ぶと世間的には正しいんだけど、それぞれにファンがついているから、連載中にどれだけ人気があっても、結局はボロクソ言われて終わりますよね。恋愛漫画とかの話ですが……」
「かと言って、世相的には全員と結ばれるってのも問題ありますからねぇ」
などと俺の言葉に涼月東が答える。
「恋愛ってシビアだからな。まあ、結婚した後に不倫する奴もいるけど、まあ、あれだ。うちの家みたいなのだと殺されてしまう」
修二さんがそうため息をついた。
「下半身が元気な人はいつまでも元気ですからね。そういや、性欲が強いからこそ、事業が成功する人もいて、それに対して封じの祈祷をすると一気に貧乏になるとか言うパターンもあるとかで、そういう場合は奥さんも浮気の祈祷とか拒否るみたいですね。貧乏になるのは困ると……」
「世知辛い話だよな」
俺の言葉に叢雲さんが苦笑した。
「いや、何の話をしてんだよ。さっきから」
などといつの間にか貴賓室の前にがっちりとした男が立つ。
身長も190センチ近い大男だ。
「アポリト? 義兄弟じゃないかっ! 」
その静観の顔つきの男を見て御堂祐樹が叫んだ。
なるほど、元は海賊であるピラティスの最強と言われるアサナトの最強のトップと言われる男だった。
のちに政治家になりパトリダの屈指の指導者になると言う人物だ。
御堂祐樹のこの世界の一番の理解者で義兄弟で相棒だったと聞く。
「ああ、久しぶりだ」
頑強で武骨な男らしいアポリトの顔が優しく笑った。
「なんだ、記憶は? 記憶は大丈夫なのか? 」
御堂祐樹がそう焦ったように聞いた。
「最初からあるよ? 」
「ならなんで? 」
「奥の院のお前の婆様からストップがかかってな。必ず会わせるから、それまで待ってほしいと……。さすがにお前の婆様には逆らえないし」
などとアポリトが意外な話をした。
それで俺がぞっとした。
まさか、全部が全部最初からお釈迦様の手で暴れた孫悟空のようにコントロールされているのか?
奥の院に……。
そう言えば御堂美月も奥の院から来たはず。
全部最初から御堂祐樹の性格を判断されて計画されていた通りに動いているという事か?
「……なんだ? このお前みたいにペラペラしゃべるのは? 」
アポリトさんが俺を見た。
「ああ、俺の自分の思った事を喋るのって呪いだったらしい。どうやら、最初からつけられてたんじゃないかって話で……それがうつったらしい」
「呪いだったのか……で誰が? 」
「多分、奥の院の婆様だ」
「ああ、奥の院は昔からそう言う事をするな。よく言われるよ。先の先を読んで布石を打って動くって……」
アポリトが苦笑した。
「いや、というか多分、ここの現状の皆の腐った雰囲気を変える為に、最初からアポリトさんを利用してやるつもりだったんですね。恐らくはこれですらも全部計画のうちです。やはり、貴方をトップに据えて、混沌の女神の神子と言う旗印を使って全ての創造世界を制覇した後は、あらゆる創造主の支配まで視野に入っているのではと……」
俺が話すと、目が飛び出そうな顔で御堂祐樹と修二さんがこちらを見ていた。
いやだって、真面目にそれでしょとしか思わないし。
すごいな。
ここまでやるんだ。
多分、アポリトさんは御堂祐樹の説得係でもあるんだと思う。
義兄弟の話なら聞くだろうと思っているんだ。
「ええええ? そこまでするの? 」
修二さんが突っ込んでくるけど、御堂祐樹も泣きそうな顔をしていた。
「ああ、そう言えば義兄弟を協力するように説得してくれって言われてるわ」
アポリトさんの苦笑で全員がその場に崩れ落ちた。
完全に状況がコントロールされているって事だ。




