第三部 第四章 ぼっち・ミーツ・ぼっち
「やはり、ピラティスのトップはアサナトの頭領アポリトだ。冥界の神ハデスの血を引くと言う噂の男だ。仲間たちにすら恐れられている男だよ。いつも、自室に籠って指示だけ出しているらしいが、戦えばたった一人で千人のピラティスを潰した事もある。恐ろしい男だ」
と言う事でカザンザキスさんの紹介状を持って、カザンザキスさんにそれなりの帆船と船員を借りて、アサナトのアジトと呼ばれる島に向かってる。
正直、カザンザキスさん様様である。
「勝算はあるんですか? 」
ムラサキが心配そうに聞くが、というか、いろいろ聞いて確信した。
こいつ、多分、俺と同じようなぼっちじゃね?
仲間を助ける為に千人のピラティスと一人で策略をつくして、また個人の強靭な武勇で戦ったそうだが、それ以来、自室に籠るようになったそうな。
まんま、俺じゃん。
「ところで、シーサーペントはどれくらい連れてきますか? 」
アオイが聞いてきた。
「とりあえず、威嚇で使うかもしれないから、全部連れてこうか」
「じゃあ、五百匹いるんで、目立たないようにばらけさせますね」
「え? 本当に五百匹いんの? 」
「はい、これからドンドン増えると思います」
まだ増えるんだ。
殆ど怪獣王国だな。
俺達が乗ってる帆船が島に近ずくとアサナトの早舟が近づいてくる。
帆船の船員がクラーケンの旗を振ると、島の入り口に早舟で案内される。
早速、帆船から降りて、アポリトの所に案内されると思えば、完全武装のアポリトが目の前に仁王立ちしてる。
なぜ、アポリトだと分かったか。
周りの武装した部下が一歩引いた形で立っている。
これはあれだ。
巻き込まれたくないって感じの雰囲気だ。
俺には良くわかる。
何と言うデジャブ。
「本当の名前を言え」
アポリトがいきなり直球だ。
アポリトは二十過ぎの年齢で百九十センチ近い長身で頑強な身体。
声も凄く重い。
「いや、コゴロウだが。カザンザキスさんから連絡が……」
「嘘つけ。そんな誰も知らんような名前の奴なわけあるか」
「いや、コゴロウで間違ってないって」
だって、改名したもの。
「そんな、訳の分からん奴がこんな数百匹のシーサーペントを連れてくるのか? 」
「え? 分かるの? 」
「分かるわ! 俺のスキルは索敵だ! なめんじゃねー! 」
なるほど、それで千人の敵のピラティスを真っ暗闇に引きずり込んで倒したわけだ。
となると、どうしょうかな。
素直に改名しましたって言ってみるかな。
「お前、腰じゃなくて、背中にある刀袋の刀を出してみろ」
げっ、いきなり核心来たっ!
やばいな。轟天を置いて来れば良かった。
「ええと……」
「あのな。話し合いに来たらまず全部見せろ。でないと話し合いになんかに応じれない」
俺がため息をついて、刀袋から刀を出した。
「やはり、轟天か」
周りの海賊達がどよめいた。
「噂の救世主さんが、一体何の用だ! 本当の事を言え! 」
「分かった。実は人生を軌道修正して、商人になろうと思って」
「「「「は? 」」」」
わぉ、すんごい空気だ。
まあ、ここは正直に話すか。
「アレクシアの戦いで奮戦して。まあ、俺のやり方って独特だから、まわりがドンドン引いてって、戦いが終わったら、皆、いなくなっちゃって、結局、ぼっちになって引きこもりになっちゃって」
うあ、言っててせつない。
涙が出そう。
「つまり、あれか。索敵やって、仲間の為に奮戦してたのに、気が付いたら、仲間が暗闇の中から、皆逃げてて、なまじ索敵スキルで仲間がどんな逃げ方したか分かって、人間不信になるみたいな感じか」
「そーそー、そんな感じ。あいつら何にもしないくせに、俺に対する皆の目がドンドン冷たくなっていくの」
「目を見たら背ける奴だな」
アポリトの後ろの部下たちがすんごい顔してる。
「それでね。納得いかないのは敵の方が同情されるの」
「あるある。卑怯だって言うんだよな」
「それ! それだよ! 」
俺が続けて言った。
「卑怯も何もやんなきゃ負けるじゃん。だからやったのに、結果はぼっちだよ」
「分かるわー」
アポリトの部下たちが頭を抱えて悶えてる。
「それなら、もう一つ聞くが、コンチュエの話はどうなんだ? 」
「ああ、それならめんどくさくなって逃げたの」
「逃げた? 犠牲になったんじゃなくて逃げたの? 」
驚いて、アポリトが聞いた。
「だって、アレクシアであんなに手のひら返されたんだよ? はっきり言うけど、勝てたよ。やったら勝てたね。でも、コンチュエの国民には大被害出るし、俺のやり方だとさらにまわりのドン引きが強くなるでしょ」
「なるほどな」
「結構、考えてたんですね」
アオイちゃんがキツイ事言う。
「もうね。勇者って呼ばれて頑張って結果が引きこもりのニートでしょ。救世主なら結果が奴隷かそれ以下もありうるかなと」
「守りに入っちゃったわけだな。分かるわー」
ぼっち・ミーツ・ぽっち
その後、俺達は意気投合して義兄弟になった。
救世主の兄なんてのはまずいから、年上だけど弟でいいと言う事で、アポリトが義兄弟の弟になった。
やはり、ぼっちは分かり合えるのである。