第十九部 第十章 アナスタシアとディエム
「いや、女媧様にそれを止めろと命令された」
和真が言った。
「え? 」
「うちの馬鹿息子の事だから、元居た世界に戻って、散々暴れて皆を巻き込んで、絶対逃げると」
「ちっ、バレバレか」
母さんにはバレバレで辛い。
「まあ、母さんだもんね。息子がやる事くらいわかるよね」
ミツキが頷いた。
「いや、それなら、こいつがこっち来たらこっちの世界がどうなるか分かってたって事じゃないか! 」
カルロス一世がちょっと怒ってる。
「まあ、そうなるな」
和真が頷いた。
「こんな歩く天災と疫病と戦争地獄みたいな奴、こっちの世界に寄越すなよ! 」
あらあら、酷い言い草だ事。
「巻き添えになる人間の事考えろよ」
クニヒト大佐が少し涙ぐんでる。
あらあら、まるで俺が悪いみたい。
「いやいや、そもそも召喚したの、そっちだし」
「「向こうで召喚を止めろよ!! 」」
カルロス一世とクニヒト大佐が二人で叫んだ。
「仲間に酷い言われ様じゃな」
樹老人がらにやにや笑ってる。
「いや、俺もびっくり。いつ巻き添えにしたんだか」
「えーと、本気で言ってるんじゃよな? 」
「ええ」
俺が答えたら、樹老人が頭を抱えた。
「本当に自覚無いのな。そもそも、その母親の女媧がいけないんじゃないのか? 」
「「「いや、シュウジさんだと思う」」」
和真と恋と紅葉が同時に言った。
「なるほど、やはり、すべての元凶は親父か」
俺がうんうんと頷きながら納得した。
「いや、そういう無自覚が一番問題じゃないか? 」
ヨシアキ大佐が呆れた顔をした。
「ああ、屑さが素敵」
ミオが呟いて悶えてる。
そう言うキャラだっけ。
ふっと凄い違和感感じて、俺が龍女さんの背後を見た。
龍女さんが俺のその変化を感じ取って、背後に瞬時に手を突き出す。
船の甲板が炸裂するが、それを一瞬に避けると一回転して襲撃者が立ち上がった。
「へー、やるじゃん」
そこに、ロシア人だろうか?
スラブ系の美少女が立っている。
年齢は十代後半か?
凄く透明感のある肌に透き通るような金髪碧眼の本物の美少女だ。
髪は首元で括っている。
「アナスタシア」
和真が驚いた。
「嘘、何でここが? 」
恋も驚いてる。
「誰? 」
俺が聞いた。
「お前の許嫁の一人だ」
和真が答えた。
皆の雰囲気が変わる。
っつーか、俺の許嫁達の殺気が凄くて震える。
「あーあー、一発で仕留められないなんて」
また別の方から声がした。
「嘘、ディエム」
紅葉まで驚いた。
今度は東洋系の女性で、凄い美少女だ。
髪は長く、腰くらいまである。
戦うのには不向きじゃないかと思うんだが、そうは言っても髪が容姿に負けず凄く綺麗だ。
「誰? 」
「ベトナム人で、お前の許嫁の一人だ」
和真がまた言った。
全然、知らない。
二人とも軍にいるらしく迷彩色の軍服は着ているが、両方ともの美しさは隠せない。
どちらも、本当に相当な美少女だ。
そのせいもあって、甲板の上はこちらの許嫁の殺気で空気が氷点下である。
「じゃ、いろいろ積もる話もあるだろうから」
カルロス一世が自然に片手を上げて逃げようとした。
「いやいや、何を仲人みたいな事言って逃げてんの? 」
「いやいや、空気やばすぎて、とても俺ごときが関われる雰囲気では無い」
カルロス一世が両手を振っていい笑顔をした。
ふと見たら、アポリトとクニヒト大佐はすでにいなかった。
「ちょっと、何逃げてんだよ! 」
「あちゃー、逃げそこなった」
そーっと逃げてたヨシアキ大佐が俺に呼び止められて舌打ちした。
「お前の仲間は酷いな」
和真が呆れてる。
「「いや、こいつに人望が無いだけだ」」
カルロス一世とヨシアキ大佐が俺を指差して同時に言った。
どゆこと?
今日は改題したんで、後でもう一本投稿します。
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