第十九部 第六章 衝突回避
「き、貴様っ! 」
アマリアが激昂した。
「あいつの許嫁はこんなんばっかりだな」
チアンウェイがため息ついた。
「……へぇ、平気なのだな」
麗が少し驚いたようだ。
「ああ、あいつの事で、こういうのは見慣れてるからな」
「はあ? 」
少しアマリアも驚いたようだ。
「あいつなら、パトリダに居るはずだぞ」
「えぇぇええええぇぇえええ? ちょっとチアンウェイ様! 」
グォクイ将軍が叫んだ。
「本当か? 」
「ああ、嘘は言わない」
「分かった」
麗が踵を返して帰ろうとする。
「ま、待て! 貴様、それだけで済むと思うのか? 」
「まあ待て、ここで騒がないなら船も用意しよう。急いでるんだろう? 揉め事はよしてくれ。さっき見る限りじゃ、全員ちゃんと海に逃げてるじゃないか。さすが、精強で鳴るアマゾネスだ」
「つまり、我々にも静かに帰れと言う事か」
「ああ、そうだ」
「チアンウェイ様、付き合いのある<終末の子>にそれはあんまりでは? 」
「いや、ここで戦争やられたら、ユエディン港も全部火の海になるぞ。あいつの許嫁と同程度なんだ。良く考えろ」
「しかし」
「ちゃんと、本人には伝えておく。あいつだったら、ああ、すまんな、しか言わんさ」
チアンウェイがグォクイ将軍に肩をすくめて言った。
「ええ? 」
「そういう奴だぞ。ただ、言っておくが、恐らくパトリダからはさらに逃げてると思う。いない時は奴を追っかけるのは構わないが、パトリダに危害を加えるのも止めてくれ」
チアンウェイが麗とアマリアを見回して言った。
「いいだろう」
麗が言った。
「お前の方はどうだ? 」
「……」
「急いでるんだろう」
「ちっ、仕方ない。約束する」
「分かった。すぐに船は用意させる」
「必ず、一番足の速い奴にしてくれよ」
「分かった」
アマリアが憤懣やるかたなしの顔で答えた。
「貴様、ケリは必ずつけるからな」
アマリアが麗に小声で睨んで言った。
「ああ、楽しみにしてる」
麗がにこっと笑って答えた。
「ちっ」
舌打ちするとアマリアが船が沈んで泳いでいる皆の方へ行く。
「もう一度だけ言いますが、本当に良いんですか? 」
再度、グォクイ将軍が言った。
「何、あいつなら逃げるよ。心配ない。それよりも、ここで知ってる人がたくさん死ぬ方が嫌だろ。あいつならな」
「良く、ご存知なんですね」
「まあ、随分一緒にいたしな」
「で、では、せっかくだから」
「それは却下。こんな揉めまくる奴の婚約者になってどうするよ。これ、ひょっとして下手せんでも世界大戦になるんじゃないか? 」
「はあ? 」
「お前、あそこの許嫁とか舐めすぎだ。あれで化けもんばかりだぞ。まして、本人も怪物だしな」
「ああ、まあ、そうかもしんないですね」
「どちらかと言うと、今後の世界大戦に対してどう動くか考えないと。本当に何で婚約者ごときでこんな大問題になるんだか。これで恐らく猛禽と修羅も参加したら、この世の地獄がはじまるぞ」
チアンウェイが本当に深いため息ついた。
猛禽と修羅と聞いて、前回、ヤマトにいた時に目の前で惨状を見てたグォクイ将軍が身震いする。
「……ところで、お前、いつまでいるんだ? 」
チアンウェイが麗に聞いた。
「悪いのだけど、パドリダってどこ? 」
麗が小首を傾げて聞いた。
「知らないんかい? 」
チアンウェイが言ってもう一度、ため息をついた。
今日は休みなんで、もう一本投稿して、後でもう一本投稿します。
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