第三部 第一章 プロローグ
やっとリュイジンの港についた。
とりあえず、ヤマトの船を探して乗せて貰う事になった。
すっかり、元のぼっちに戻った俺は、ただ、皆についていくだけだ。
元々、ぼっちだったのに、リアンフアンさんが言った話もあって、さらに、皆に距離を置かれてる。
特殊作戦部隊のトップで大佐のはずなのに、いろいろと決める事は全部ミヤビ王女とヨシアキ中佐でドンドン決まっていく。
さらに、こうしたいんですが? とか判断を聞くような事も無いし、それどころか、こういう風になりましたって説明すらない。
ただ、俺は無言で彼らについてくだけだ。
ムラサキ中尉だけが心配そうに俺の顔を見てる。
もう、ヒロイン、この子で良いんじゃないかな?
男の子だけど男の娘だし。
船に乗ったらさらに空気が重い。
スキル高速逃亡を使っただけあって、まだ、こちらにフェイツィの話は一切伝わって無いし、アレクシアの件だけ聞いてるヤマトの船員達からは、腫物扱いだ。
俺達が乗った帆船は出航したが、皆は船室なのに、俺は掃除用具置き場の横で寝てた。
まあ、今日だけなのかな? と思えば、一週間たってもそのままである。
王宮の部屋でニートやってる方が良かった。
「まずいな。前回は勇者からニートだが、今回は救世主だ。本当に奴隷にまでランクダウンするんだろうか。」
小声で呟きながら、粗末な毛布にくるまった。
目の前の皿に残ってる残飯のような飯を見た。
ご飯に残り物のスープをぶっかけたような飯だ。
元々、ヤマトでは引きこもりするくらい空気が悪かったのだが、船内ではミヤビ王女やヨシアキ中佐とかの距離を置いた態度が船員達を刺激するのか、日に日に俺の待遇が悪化していく。
待てよ。
良く考えたら、リアンフアの話を懸案すると、モンスター扱いもありうるのか。
これは、まずい。
退治されてしまうかもしれない。
不安に駆られて、部屋から出て、甲板に出るとすでに夜だった。
向こうを見ると島があるのか明かりがいくつか見えた。
そして、真っ暗な海を見ると何かあったのか、いくつも小舟が人も乗って無いのに流されている。
そのうち、一つの小舟が俺達の乗っている帆船の下側に当たった。
良く見ると櫓がついてる。
「こ、これは! 俺を呼んでいるのか! 」
「偶然だと思いますよ」
驚いて横を見るとムラサキ中尉がいた。
お互い無言だ。
「逃げたいんですか? 」
ムラサキ中尉がマジマジと俺を見た。
「逃げたいんじゃなんだが、なんか俺を呼んでる気がしてな」
はい、嘘です。
俺の尊敬する人の一人に桂小五郎がいる。
幕末で逃げの小五郎と言われ、乞食や商人に身をやつしてまで、幕府の捕り方から逃げて、維新を行ったとか言う人である。
京都にいれなくなると、出石の商人の庇護を受けて、但馬に商人にとして身をやつしたと言われてるが、最近の学説では、幕府にも追われ長州にも居るとこ無くなって、ぶっちゃけ、ガチで武士辞めて商人に第二の人生見つけてたみたいで、俺もそんなのに憧れる。
人はそんなに強くない。
だって、にんげんだもの みつを
「確かに、最近の皆は酷過ぎますよね。一生懸命説得したんですけど聞いてくれませんでした」
やっぱりヒロインでした。
ムラサキ中尉が怒ってる。
なんだか、うれしい。
とりあえず、たまに様子見には来てくれてたんだよね、ムラサキだけは。
「とりあえず、行ってみようと思うんだが」
俺が真っ暗闇の中のいくつかの明かりを指差した。
「行っちゃいますか? 」
いたずらっぽくムラサキ中尉が笑った。
やっぱり、ヒロインだわ。
ムラサキが自分の階級章を剥いで船の床に丁寧に置くと小舟に飛び降りた。
本当に一緒について来てくれるんだ。
ありがたい。
もう、俺もこれ以上はしんどいしな。
俺も大佐の階級章を剥いで床に置くと小舟に飛び降りた。
「とりあえず、ここを脱出したら桂小五郎先生のように商人にジョブチェンジだ」
小声で叫びながら、小舟を真っ暗闇に漕ぎだした。