第十七・五部 第六章 パトリダ
やっとパトリダについた。
最初についてきてくれた義弟のリヴァイアさんとシーサーペントに美味しいものを大量にあげるようにアサナトの連中に頼んだ。
実はちゃんと俺達の豪華高速帆船について来てくれたのだ。
爆龍王ゴウオウは猛禽事件で馬鹿らしくなって、何かあったらまた来ると言って去って行ったらしい。もし、こちらに来たら一杯お酒とか御馳走するつもりだ。
再建が終わったカザンザキスさんの邸宅で俺は離れに大きな別邸を貰う事になって、そこに荷物を皆で移したりしてた。
新しく、燐女さんと深雪とさくらが増えたが、余裕で部屋があるので問題ないようだ。
と言うか、すでに深雪とさくらも俺の許嫁のつもりらしく、ガチで来年の結婚式に一緒に妻として並ぶらしい。
両親はどうすんのよと聞いたら、向うでも式を挙げれば良いとか、わけわかんない事言われた。
不思議と異世界に行く小説なんかでは男性作家が書くと結局、主人公は元の世界に帰る事が多いが、女性作家の場合、何故か彼氏を追っかけて向こうの世界に行ってしまうパターンが多い。
やっぱり、女性は強いのだろうか。
アポリトとこちらの商売をまとめてるカザンザキスさんの息子のイオアニスさんと番頭をやっているアサナト出身のヤニスが来た。
「あれ? 商売の事については明日に集まって話すんじゃなかったですか? 」
「いえ、それがおかしな事になってまして」
ヤニスは元々大きな商家の息子で優秀で、彼の父親が彼の母親が亡くなって別の女性と再婚し、その義母に追い出された為に食えなくてアサナトに入った変わり種だ。
海賊をやってる中で最強のアサナトに居るわりには性格が良く生真面目なので、前はアサナトの運営の実質的な部分を任されていた。
年齢もアポリトと同じくらいで俺とも話が合う。
「おかしな事ですか? 」
「はい、すでに開店されてるスーパーの近くもそうなんですが、我々の店のすぐ近くに、小型なのですが、小さなお店を一気にたくさん作ろうとする者がいるのです」
「へ? まあ、たくさん店が出来てトータルの集客が上がるなら別に良い話なんじゃないでしょうか? 」
「いや、それがうちのスーパーと戦うとか言ってるらしいんですよ」
イオニアスさんが困り果てた感じだ。
「なんですと! 商売敵と言う事ですか! 」
「はい」
イオニアスさんとヤニスが頷いた。
マジかよ。
燃えてきた。
「そうですか。実は私はこれを待っていたのです」
「え? と言いますと? 」
ヤニスが不思議そうに聞いてきた。
「私は商人。なのに、訳の分かんない戦いばかりさせられて、あんなのどうでも良いんですよ。私のやりたいのは事業で戦う事。まさに、これこそ商人の醍醐味」
俺がごうごうと燃えながら言った。
「いや、お前、<終末の子>なんだから、戦う方が本業じゃろ」
いつのまにかいた樹老人が俺に突っ込んだ。
「いえ、商人ですから」
樹老人がため息ついた。
「あー、それがな。店名がゾンビ・ホッタって言うんだ」
アポリトが呆れた顔だ。
「え? 何、その変な名前? 」
「さあ? 何かおかしくないか? 」
「うーむ」
せっかく燃えて来たのに、ちょっと不安になって来た。
仕方ないので、皆で視察に行くことにした。
いつも、読んでいただいてありがとうございます。




