第十七・五部 第四章 逃げる
目が覚めた。
ああああああ、やっぱりこうなったか。
横の巨大なベッドに十一人寝てる。
全員裸だ。
本当にノルマが一人一日十五回になると思わなかった。
どこまで行くんだろう。
思わず、遠い目をしてしまった。
良く考えたら十一人って、全員一人産むだけでサッカーチームが出来る。
あ、でも、ムラサキは男の娘だったな。
じゃあ、十人か。
せつない。
今回は少し記憶がある。
だいぶ、耐性がついたのか?
そうか、処女でも回復魔法を掛ければ、すぐにいけるのね。
どおりで。
処女膜が戻らないように治す回復魔法ってなに?
説明聞いてたら、どんな魔法を猛禽の間で受け継いでんだよ。
涙が止まりません。
とりあえず、いつものように早くここから逃げなくてわ。
何しろ、朝のもう一度がはじまってしまう。
そもそも、朝だけど、次の次の日の朝だからな。
再度二十四時間マラソンなんかごめんだ。
そっとベッドを降りると服を着て、ささっと外に出ようとして、ふと昨日気になった事を調べてみる。
ムラサキだ。
昨日は初めて意識が少しあったので、不思議に思った事があった。
男の娘なのに穴が違うような。
そっとムラサキの毛布をあげて気が付いた。
え?
思わず、声が出そうになった。
この子、両方ついてる。
マジですか。
起きるとヤバイのでとりあえず、すぐ毛布をかけた。
両性具有ですか。
サッカーチームいけるやんけ。
誰も気が付かなかったのかよ。
とりあえず、気が狂いそうなんで、そっと部屋を出た。
とりあえず、捕まらないように迎賓館を出ると、そこでカルロス一世にあった。
「お、お勤め、ごくろうさん」
カルロス一世がにこやかに笑った。
「とうとう叔父さん越えですよ」
俺がカルロス一世に愚痴った。
「一日十五回の十一人です。トータル百六十五回ですよ」
ちょっと、涙が出そうだ。
ふっと自嘲気味にカルロス一世がため息ついた。
「ノルマはあくまで最低ラインだぞ? 」
「え? 」
「俺の最高記録は三百六十三回だ」
カルロス一世が悲しそうだ。
「ええ? 」
「三日間眠れなかった……」
俺とカルロス一世がお互いに寂しい顔で目と目とを合わせて、静かに近くのベンチに二人で座った。
せつない。
涙がとまりません。
「おお、終わったのか。ごくろうさん」
チアンウェイが笑ってる。
今日はテレポートして来てない。
「何がごくろうさんなのよ」
「やると仲直りできるんだから、仕方ないだろ」
「そんな直接的な事を貴族でしかも女性なのに言うなよ」
「リィシン将軍は昔、最強と言われた殺人集団のジジンのメンバー十人と一人で戦って何とか勝って名を挙げたが、お前の嫁とかジジンのメンバーより全員遥かに強いって言ってた」
「マジですか……いや、そうだよな」
「と言うか、ヤマトの女性自体が異常だろ。おかしいわ」
カルロス一世も横で愚痴る。
「アポリトもコンチュエまで鳴り響く猛者なのに、ヤマトの小娘にケチョンケチョンだったからな」
チアンウェイが呆れた顔をした。
「え? そうなんですか? 」
俺がカルロス一世に聞いた。
「いや、俺、その前に逃げたし」
「貴方も、天才と言われた世界に知られた猛者でしょうよ」
チアンウェイが本気で呆れてる。
「いや、最近、それは皆の勘違いだったんじゃないかなと」
カルロス一世がポツリと答えた。
「君は本当に変わったんだね」
ダグダ師匠が後ろから笑って声をかけて来た。
皆が集まってるので来てみたようだ。
「変わりますよ。うちの嫁達を見たらね」
さびしそうにカルロス一世が笑った。
「ああ、分かりますわー。あの辺異常ですもんね」
「だったら、俺にぶつけるなよ」
泣きそうな声でカルロス一世が俺に言った。
「すいません」
「え? そんな凄いの? 」
ダグダ師匠の驚いた言葉に、無言で俺とカルロス一世が頷く。
「ええええ? 」
「ところで、流石に一度パトリダに帰りたいんですけど」
俺がチアンウェイに聞いた。
「どうした? 」
「いや、そろそろ商売に身を入れないと」
「はあ? ああ、商人だったな、お前」
「そうだよ? 」
「え? 商人なの? 」
ダグダ師匠が驚いてる。
「そうですよ。それなのにあちこちで戦わされて。おれの主戦場は商売ですから」
「いや、あんなに強いのになぁ」
「お蔭でいつも呼ばれてしんどいです」
俺が疲れたように答えた。
「ふぅ。そうかぁ。もう帰らないといけないんだよな……」
凄く凄くしみじみとカルロス一世が言ったので、皆が静かに黙った。
やっと、仕事終わりました。
昨日はありがとうございます。
特にブックマークをありがとうございました。