第十七・五部 第二章 デットオアライブ
空気が重い。
なんですか、時間が止まってますか?
すでに、俺の全身はこちらの世界に現れているのに、誰も動かない。
マジでどうしていいか分からない。
「あれ? ミツキちゃん? 」
深雪がいきなり聞いた。
「あれ? 深雪さん? 」
そーなのだ。
二人も実は幼馴染だったりする。
「貴方もこちらの世界にいたの? 」
深雪が聞いた。
ミツキが頷いた。
これはあの赤毛の兄ちゃんありがとうだ。
彼はあまり良い事でないと思ったせいか、許嫁の中に妹がいるのを言って無い。
よし、これなら、何とかなるのでは。
「そ、その恰好はなんなの? 」
幼馴染とはいえ、ミツキも納得いかないのだろう。
「ああ、これ? 向こうでシャワー浴びてる時に、いきなり祐樹君が消えだしたから慌てて、バスタオル巻いて出て来て祐樹君の服を掴んだの」
深雪が恥ずかしそうに自分のバスタオル巻いたままの姿を見て言った。
「シャワー? 」
ミツキの目が少し細くなる。
だが、しかし、俺は知っている。
こういうとこで、慌てて弁解するから、駄目になるのだ。
ここは無言でひたすら耐える。
これこそが助かる為の、そのイチだ。
「神社行ったら祐樹君が居て、石灯籠からお金出しててね。それで驚いて話をしてたら、変な人に会って、そのうちの一人に祐樹君が刺されちゃって」
「え? 刺されたの? 」
全員が修羅から鬼モードに少し下がった。
「大丈夫なのか? 」
龍女さんが俺に聞いてきた。
俺が、コクコクと何度も首を上下する。
「それで祐樹君が戦いだして、いきなり刀を出したら爆発が起こってね」
「ああ、轟天ね」
俺が竿袋をテープで巻いてタオルでくるくる巻きにしてる轟天を入れた袋を無言でかけてあった肩から降ろす。
消えだした時に、慌てて左手で肩にかけたのだ。
「それで変なロボットみたいなのになって空飛んで逃げたりしてたら、私も緊張から汗で身体がベタベタになって、それで変な連中から隠れるために泊まったホテルで汗を落としたくてシャワーを浴びてたの」
深雪が笑って答えた。
良かった。
空気が緩んできた。
ひょっとしたら助かるかもしれない。
「あれ? 良く見たら生徒会長やってた、さくらさんじゃないですか」
ミツキがさらにさくらを思い出したようだ。
「ええ、深雪さんと一緒に神社行ってたもんで」
さくらが少し気恥ずかしそうに答えた。
「つまり、浮気なんかじゃ無ないと」
アオイが氷点下の声で聴いた。
俺が再度コクコク頷く。
ふわっと皆の空気が緩くなる。
助かったぁぁぁぁぁああああああああ!
生還!
「あの、貴方方が祐樹君の許嫁さんですか? 」
深雪がアオイに聞いた。
皆が頷く。
「八人もいらっしゃるんですよね? 」
深雪がアオイに聞いた。
「あ、今、九人です」
燐女さんが要らんことを言う。
「え? 九人って? 」
深雪が一人ずつ指差して数えだす。
燐女さんを指差した時はあまりに姿が幼いので、深雪とさくらの顔が引き攣る。
チアンウエイを指差すとチアンウエイは違うと言う感じに手を振った。
「私も違うし、こちらは私の叔母で、この国の女帝だ。だからこの御方も違う」
チアンウェイが女帝を紹介した。
女帝と言う言葉に反応して深雪とさくらがびっくりしたように深く頭を下げた。
「そして、こちらの方は巫のリアンフアンさんで、これも違う。つまりはそれ以外の女性と言う事だ」
チアンウェイの言葉に従がって、深雪がせんでも良いのに、また一人一人数えだす。
ミヤビ王女で「七」ミツキを飛ばしてアオイで「八」と数えて、首を傾げる。
「あ、私が九だから」
ミツキが笑顔で答える。
はい、生還失敗。
「えええ、ミツキちゃん、妹でしょ? 」
深雪が驚く。
「ああ、こっちは妹でも結婚できるの」
ミツキが嬉しそうだ。
「いや、それは駄目でしょ! 兄妹なんだよ! それじゃ、エロゲじゃん! 」
深雪が叫んだ。
おい、エロゲって言うのかよ。
「こっちでは出来るんだもの」
ミツキも引かない。
「いや、駄目だって」
「そんな事言ったら、ムラサキさんなんて男の娘だよ? 」
はい、クリティカルヒット。
「「はぁああああああああぁぁ? 」」
深雪とさくらが叫ぶ。
「ちょっと、向こうでは白人の婚約者さんが居たし、どうなってるの? 」
さくらが動揺して言ってはいけない事を言った。
はい、死亡。
空気が完全に変わった。
あかん。