第十七部 第六章 再会
「お、お前。<終末の子>だからとわざわざ会いに来てみたのに……」
赤毛の男がグチグチ言った。
「終わりの子? 」
さくらが不思議そうに聞いてきた。
「人生が終わっちゃたから終わりの子って言われてんだ」
少し悲しそうに俺が答えた。
「え? やっぱり何かあったの? 」
深雪が驚いて聞いてきた。
「いろいろとね」
俺がさらに悲しそうな顔をした。
「そ、そう」
さくらが心配そうだ。
お蔭で深雪とさくらが俺に深く聞いてくることが無くなった。
ありがとう、赤毛のお兄さん。
「ケネス、貴方、何をしてるの? 」
金髪で碧眼のショートカットの凄く綺麗な女性が赤毛のお兄さんをケネスと呼んだ。
へーケネスさんなんだ。
何か、その綺麗な金髪の女性の後ろに身長が百九十センチ近いゴツイ人がいるが、相当やりそうだな。
中国系か?
それにしたら身体がでかいからハーフかもしれない。
やはり、護衛の人なんだろうな。
「シャーロットか」
赤毛のお兄さん……ケネスさんが言った。
「ええ。女媧様に言われて来たんです。お久しぶりですね祐樹様」
シャーロットが頭を下げた。
女媧様って事は母さんの使いって事か。
お久しぶりって誰だっけ?
むう、地雷を踏むのは困るなぁ。
「あ、どうも、お久しぶりです」
と適当に答えた。
マジで誰だか分かんない。
「覚えててくださったんですか? 貴方の婚約者のシャーロットです」
シャーロットが胸のロケットをいじりながら、少し頬を染めた。
「え? 」
思わず声が出る。
誰?
婚約者?
「はぁ? どなたですか? 」
深雪が一歩前に出てシャーロットを睨んだ。
さくらも顔つきが凄くなってきた。
「祐樹様のお友達ですか? 初めまして祐樹様の婚約者であるシャーロットと申します」
何か皆、日本語うまいけど、婚約者なんていたっけ?
翻訳スキルのおかげで俺には日本語の様に聞こえてるけど、深雪とかも普通に話してるから、やはりちゃんとした日本語を話してるんだろう。
みんな日本語を勉強したんだ、難しいのに。
「すいません。彼とは幼馴染なんですけど、婚約者なんて聞いた事無いんですが? 」
深雪がマジ顔でシャーロットを睨んだ。
「祐樹様のお父様と私のお爺様の約束で婚約したのです」
シャーロットがきっぱりと答えた。
ええ、あの糞親父、何を約束してんだ?
思わず、顔が引き攣る。
「ちょっと、知ってた? 」
物凄い形相で深雪とさくらが詰め寄ってきた。
「いや、婚約は知らない」
慌てて首を振った。
「ほら、本人は知らないじゃない」
深雪が必死だ。
「婚約の約束は約束ですから」
シャーロットも負けじと言い張った。
その時、シャーロットの後ろのゴツイ人が一瞬で動いた。
俺の腹に彼が隠し持っていた直刀が突き刺さる。
「ぐぁっ」
ギリギリの所で俺が心臓をずらしたが、腹に直刀が深く刺さった。
「なかなか、隙を見せなかったが、女に気を取られてやっと見せたな。だが、それでも心臓を避けるとはたいしたものだな」
ゴツイおっさんがにやりと笑った。
俺が腹を押さえて座り込んだ。
流石に腹に刀が刺さったのは初めてだ。
痛てぇ。
深雪とさくらが悲鳴をあげる。
「ホアン! 何をするのです! 」
ゴツイおっさんがシャーロットに怒鳴られた。
この野郎、ホアンって言うのか。
「私は最初から、こうやって<終末の子>を殺す目的で、わざわざ貴方の配下になったのですから」
ホアンが冷たい笑みを浮かべた。
俺が腹に刺さった刀に集中する。
例の濃縮する奴だ。
これ、刃に毒が塗ってある。
糞っ。
「ほう、毒を刃に集めて、身体に流れないようにしたか。器用な事をするな」
ホアンが薄く笑った。
何で分かった?
こいつ、糞やばい。
むう。
スローダウン。
どこ行ったんだろ。
ほげぇぇぇ。