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全部社会が悪いんやっ! 〜ある救世主として召喚された男の話   作者: 平 一悟
人物紹介は470から475のあたりにあります。
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第十七部 第五章 説明

 そのまま階段を降りると、しれっと神社の並木道を三人で歩く。


 勿論、俺の足にまとわりついている深雪の飼い犬のチコも一緒だ。

 

「そういや。昔、この神社の祭りでこうして三人で歩いたよな」


 ふと、俺が参道を見て懐かしくなった。


「あー、あったあった」


 深雪が懐かしそうだ。


「あの時は、深雪は巫女姿だったよね」


「まあ、神社の社務所の休憩中だったからね」


「奢るから、うまいものでも食べながら話そうか」


 俺が嬉しそうに言ったら、ふと目の前を見ると並木の所にさっきの赤毛の男が木に足を軽く組んで寄りかかって立っている。


「おい、無視とは酷いな」


 そいつが話しかけて来るが、とりあえず気が付かないフリをする事にした。


「あまり、この辺でお酒を飲んだ事無いんだけど、どっか美味しいとこあるのかな? 」


「駅前にあるよ」


 深雪が教えてくれた。


 深雪は長い付き合いだから、俺がわざと無視してるのが分かるので俺にあわせてくれるが、さくらは分かんないみたいで、ちらちらと赤毛の奴を見てる。


「しっ、見ちゃ駄目だ。危ない人だ」


 俺が小声でさくらに囁いた。


 さくらがびくっとして見るのをやめた。


 赤毛の奴の顔がキレてくる。


 むう、短気な奴だな。


 俺にどうしろと。


 仕方ないな。


 俺が二人の肩を掴んで引き寄せた。


 深雪にはチコを抱いて貰った。


「……驚かないでね。スキル高速逃亡」


 そうして全力で逃げ出した。


 まあ、当たり前だが、凄いスピードが出てるんで、深雪とさくらが驚いてる。


「ち、ちょっと、どういう事? 」


 深雪が叫んだ。


「えええええ? 」


 さくらも驚いてる。


「ちょっと、怖いから止めて! 止めて! 」


 深雪が叫ぶ。


 むう、仕方ないな。


 とりあえず、あまり目立たない所で止まった。


 まあ田舎なんで爺さん婆さんのウォーキングがまれにいるくらいだ。


「一体、これは何なの? 何が起こっているの? 」


 深雪が俺の目をじっと見て聞いてきた。


「私にも教えてほしい」


 さくらもじっと俺を見た。


 どういう風に説明したらいいんだろ。


 仕方ない、さっくりと分かりやすいように説明するか。


「実はトラックに轢かれて死んで異世界に転生したら勇者になってたんだ」


 俺が言ったら、深雪にグーパンチで殴られた。


「は? え? 」


 さくらはすんごい顔してる。


 いやだって、実は向こうの世界からこっちに転生して来た父親が俺を産んで、俺がかわりに召喚されてとか言ったってメンドクサイし、信じて……あれ?


 これ、どう言っても殴られね?


 説明したって無理だよな。


 最初から話が嘘に聞こえる。


「あのねぇ、真面目に言ってほしいんだけど! 」


 深雪が俺にガチギレで睨む。


「いや、真面目に言ってんだけどね」


 トラックに轢かれて死んで転生の方が分かりやすいと思ったんだけど。


「お前、本当に逃げるのに特化してんのな」


 いきなり、目の前にテレポートして来た赤毛の男が言った。


 深雪とさくらがびっくりしてる。


 げ、チアンウェイと同じようにテレポート出来るんだ。


 それなら、無視も無理だな。


「よし、分かった。俺も腹を括ろう。そこのお兄さん、俺に何が起こったか説明してくれ」


 俺が仕方ないと言うように赤毛の男に頼んだ。


「は? 何で俺が? 」


「いや、俺がどう説明しても、この子達に殴られそうだからだ」


 俺が胸を張った。


「はぁぁぁあ? 」


 赤毛の男が呆れた声を出した。


「頼む」


 俺が手を合わせて頭を下げて頼む。


 俺も必死だ。


「はあ。仕方ない。こいつはな、異世界から転生して来た親から産まれた男でな……」


 親切にも赤毛のお兄さんは俺の代わりに俺の事を説明しだした。


 詳しい話を知ってるので、恐らくこちらの神族の人だろう。


 助かった。


 赤毛のお兄さんに話を聞いている深雪とさくらの顔がみるみると引き攣っていく。


「こちらの世界の創造主たる女媧(じょか)様の子にしてだな……」


 必死に赤毛のお兄さんが説明してるが、言ってる事が厨二にしか見えない。


 説明してるのがさらに外人さんだしテレポートしたりしてたから、ますます深雪とさくらがドン引いてる。


 凄いぞ、赤毛のお兄さん。


 俺なら無理だ。


 徐々に深雪とさくらの様子に気が付いた赤毛のお兄さんが脂汗を流し出した。


 深雪とさくらの顔がドンドン引き攣ってるからだ。


 俺が説明しなくて良かった。


 これ、やっぱり罰ゲームだわ。


「やっと全部言い切った……こ、心が……心が壊れる」


 赤毛のお兄さんがその場に蹲った。


「分かった? 」


 俺が深雪とさくらに聞いた。


「「分かんない」」


「だよね」


 ふぅ、とりあえず説明終了。 


 




 


 



 ブックマークありがとうございます。


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