第十七部 第四章 神社
俺がお金を隠したのは幼馴染の深雪の親が神主をしてる小山の上の神社の中だった。
いちおう、社格としては郷社になるのだが、住んでた街の氏神だった。
その神社の境内へと上がる階段を俺が一人で上がっていく。
すでに薄暗く、普段から神主が常駐の神社で無いので神主さんもいないし、参拝者もいなかった。
その並ぶ石灯籠の一つで俺が立ち止まった。
石灯籠には奉納した人の名前が彫られており、俺の名前の御堂祐樹になっている。
その石灯籠の真ん中のあたりを渾身の力で押すと真ん中の石が丸く抜けて空洞が現われる。
そこに俺が手を突っ込んでビニールで巻かれた百万円の札束をいくつも出した。
「こういうとこに隠しとくとは思うまい」
思わず笑みがこぼれる。
「そこにいるのは誰? 」
いきなり背後から声を掛けられた。
すると、その人の飼い犬らしい犬が喜んで俺に飛びかかかって来た。
「ち、チコ! ちょっと! 」
言いながら動揺している声に覚えがあった。
「え? 深雪? 」
思わず振り返ると深雪だけでなく、高校の時の生徒会長だったさくらもいた。
深雪はボーイッシュでショートカットの似合う美人だったし、さくらは髪の長い純日本風の美人と言う感じだ。
「「祐樹君? 」」
二人に同時に言われてびくりとする。
「な、何やってんの? 」
深雪が石灯籠の中から、札束の袋を出してる祐樹を見て驚いたように聞いた。
やばい、無茶苦茶怪しい事やってる。
「えーと、お金の集金に……」
俺が焦って答えた。
むう、誤魔化せるわけないか。
「はぁああああ? 」
深雪が呆れ果てたような顔をした。
「それよりも、あのネットで話題の話なんだけど」
さくらがじっと俺を見た。
「え? 何かあったの? 」
俺が平然と装って聞いた。
「ああ、あのミドウユウキって、やっぱり祐樹君の事なんだ」
深雪が断言した。
やばいな。
幼馴染だけあって、誤魔化しが効かない。
俺が誤魔化す時の癖でも知ってるんだろうか?
「何があったの? 突然、いなくなるし」
突然、さくらが涙声になる。
ええ?
泣くような事なの?
「いや、別に……」
俺が言いながら目が泳ぐ。
この二人は苦手だ。
「別にじゃないでしょ」
深雪が少し怒った。
「君達を巻き込みたくないんだ」
などと言ってみた。
とりあえず、説明できる話じゃないし。
正直、面倒くさい。
「女性を泣かすもんじゃないと思うよ」
いきなり、さらに背後から言われた。
誰かと思ったら、神木の前に男がいる。
赤毛で身長は俺と同じくらいか?
これまた美男子で翡翠のような目をしてる白人さんだ。
何でしょう。
格好つけて足組んで、神木の一つに寄りかかってる。
あまり、俺とは気が合いそうに無いタイプだな。
「とりあえず、ぱーっと飲みに行って話し合うか」
俺が深雪とさくらの肩に手を回して、神社の境内を階段まで歩いていく。
「おいおい、無視とは酷いな」
後ろから声がかかるが気にせず、気が付かない振りをして階段を降りて行く。
「……いいの? 」
さくらが小声で聞いてきた。
「うん。多分、危ない人だ」
俺が笑顔で答えた。
君子危うきに近寄らず。
だって、にんげんだもの
みつを
結局、二話ずつ投稿してます。
何やってんだか。