第十七部 第三章 シャーロット
日本の巨大な超高層ビルの最上階にある、マクラミン財団の事務所。
ここが、こちらの世界の日本での支部であった。
その一室の執行役員の部屋に一人の女性が豪奢な机と椅子に座って、パソコンを見ていた。
部屋と言っても、小さいホテルのロビーより大きく、調度も価格が想像できない高価なものが揃っていた。
その女性はこのマクラミン財団の孫娘で、シャーロット・R・マクラミンと言った。
金髪碧眼でショートカットの美しいスーツを着た女性で、年齢は二十歳だった。
ユウキの母親である女媧のホログラムが突然に机の前に現われたので、椅子に座っていたシャーロットが立ち上がった。
女媧はかってユウキが地下神殿で見たまんまの美貌と美しさをしていた。
これで、子供が二人いるとは信じられない容姿だ。
「これは、どうなさいました? おばさま」
シャーロットが驚いたように聞いた。
「シャーロットちゃん、ごめんね。うちの馬鹿息子が日本に戻って来てるようなのよ。ウィリアム少佐の確保と証拠隠滅だけで無くて、馬鹿息子の方も監視して置いて欲しいのだけど」
「馬鹿息子? と言いますと、<終末の子>ですね」
「そう。こちらでも随分悪さしてるけど、向うでもいろいろやってるみたい。あまり刺激しないでね? 向こうでやってる話を聞く限りでは、結構下手にいじると大仰な事になりそうだし」
「……あの。思い切って、私が会って連れ戻しましょうか? 一応、私は婚約者ですし」
「え? ああ、子供の時の話ね。あれはもう気にしなくていいのよ? 」
「いえ、私はそれを大切な約束だと思ってますから」
シャーロットがきりっとした顔をした。
「うちの旦那と貴方のお爺様のたわいもないお酒の席の話なんだけどね」
「いえ、私も一度本人に会ってますし」
シャーロットが胸のロケットを手慰みにいじる。
「あら、まだ、あの子の中学生の写真持ってるの? 」
「はい」
シャーロットが少し頬を染めて俯いて、ロケットをいじる。
「我が息子ながら、貴方のようなちゃんとした御嬢さんにふさわしいとは思えないんだけどね」
困ったような顔を女媧がした。
「いえ、それでも、私にとって大切な話ですから」
「そう。私にとっては、それはうれしい話だけど、でも、あの子、あっちで随分といろんな女の子と許嫁になってるみたいだし、あんまり私はそう言うのって好きでないしねぇ」
「いろいろあって混乱してるだけだと思います」
「だと良いんだけど。それと、神族の一部が<終末の子>に興味を持ってチョッカイ出しそうなのよ。でも、あの子、スルトも倒したくらいだから日本に被害が出ても困るし。その辺も監視して止めてくれるとありがたいのだけど」
「分かりました。私の護衛兵を使って対応させます」
「ありがとう」
女媧が嬉しそうに笑った。
「後、私も一度会ってみようと思います」
「うーん。本当に申し訳ないけど、私は、もっと良い人を探した方が良いと思うんだけど」
困ったように女媧が言った。
「いえ、その為に日本にいるのですから」
「……分かったわ」
女媧がしょうがないなという顔をして答えるとホログラムが消えた。
シャーロットが胸のロケットを少し強く掴んだ。




