第十六部 第八章 傷だらけの男
食事中の方は、読まないでください。
すいません。
カルロス一世がここぞとばかりに聖樹装兵のライフルを撃ち込むが傷だらけの男は平然とそれをよけながらライフルの応射をやめない。
下痢をしてるはずなのに、全く平気な感じだ。
「ど、どういう事だ? 」
チアンウェイが動揺したようだ。
「え? 不発? 」
ミツキが聞いてきた。
「いや、手応えはあった」
俺が答えた。
「なんという勇者だ。糞まみれで平気で戦うとは」
俺が感嘆した。
「どうすんの? 」
ミツキが突っ込む。
「今度はゲロをためしてみよう」
俺が再度手をかざす。
「やめんか! 」
チアンウェイが騒ぐが、それを龍女さんと燐女さんが身体を張って止める。
「げぼぼぼぼぼぅぅぅぅぅげぇぇぇぇえ。だびだびだび」
激しい嘔吐音とさらに凄いしたたる水の音が聞こえるような声と音がする。
その音だけで、ユイナやミオが口に手をやって貰いゲロになりそうになった。
しかし、カルロス一世の聖樹装兵への傷だらけの男の聖樹装兵の正確なライフルの応射は続いた。
「あいつ、中のモニターはゲロまみれのはずだぞ」
カルロス一世がドン引きした。
「すげぇ。それでも怯まないとは、まさに勇者だ」
俺も驚いた。
凄い奴だ。
「なんか、理科の実験みたいになって来たね」
ミツキが楽しそうだ。
おいおい。
「とりあえず、あいつを追い払え。こんな所で着装をとかれても、こちらも困る」
チアンウェイが俺に指図した。
「仕方ない。最後の手で行くか」
俺が覚悟を決めた。
「おいおいおい。また、あれかよ」
カルロス一世がため息ついた。
俺が相手に手のひらを向ける。
「相手の心を攻める」
またしても、傷だらけの男と俺達の間に巨大な両面から見えるスクリーンが出てくる。
建物の中にいる中学生くらいの男の子を親が呼んでる。
男の子が手を振りながら、建物から外に出たつもりが、そこには実は透明な巨大なガラス窓であり、ガラスが割れて身体や顔を切りまくる。
親が大騒ぎしている所から画面が変わって、病院で顔の包帯を取ったら鏡の中の男の子は顔中傷まみれになっている。
「え? 戦闘とかで、ああなったんじゃないの? 」
ミツキが横で呟いた。
「これは可哀想じゃの」
龍女さんが同情してる。
さらに画面が変わって、男の子は軍人になる。
特殊部隊のようだ。
「おお、凄い面構えだな。神族とは聞くし、さては相当強いんだろ」
どっかで聞いた声が画面から流れる。
軍人になった傷だらけの男にポンポンと肩を叩く男の顔が現われた。
「「親父だ」」
俺とミツキが思わず呟いた。
又画面が変わって、実際の戦闘の様子だ。
「とりあえず、こっちの五十人は俺が相手するから、そっちの五十人は任せるよ。あんたなら簡単だろ」
親父がアサルトライフルを持ちながら笑った。
「いや、私はそんなに強く無くて、無理であります」
「またまた、それだけ戦いで産まれたような顔してて、そりゃ無いだろう」
親父が言うと、そのまま行ってしまい、たった一人での激しい戦闘になる。
はっきり言って、半狂乱になりながら奇跡的になんとか相手を退かすことが出来た。
全部の戦争が終わって、皆の前で親父が凄腕と勝手に傷だらけの男を紹介しまくる。
その結果、次の画面も次の画面も信じがたい戦闘に参加させられ地獄のような日々を送る。
中には、また無茶な事を頼む親父が映る。
ついに傷だらけの男は疲れ切って表情が無くなり何をしても無反応になる。
彼女から貴方は変わったわと言われて捨てられてしまう。
そしたら、場面が変わり、親父が現われて中学生くらいの俺が映ってる。
「これ、俺の息子。凄い顔のおじちゃんだろ。凄腕なんだぞ」
と親父が俺に紹介してる。
なるほど、それで、俺がどっかで会った記憶があったんだと思う。
楽しそうに俺と親父が二人で買い物しに行ってしまう。
その後でがっくりと下に跪くような、地面のアップがある。
「なんでだ。なんで俺だけ……」
画面がプツンと消えた。
「え、えーーーと」
俺があまりの事にどう言っていいか分からなくなり、思わず悩む。
「え? これ、父さんが悪いことになるの? 」
ミツキが横でアオイや龍女さんを見回した。
アオイも龍女さんも困った顔をした。
「そうなんだよな。お前、あの野郎の息子なんだよな」
地獄の底から聞こえるような声がする。
「ウィリアム少佐! 外に出たら駄目です! 」
後ろの方から、燐女さんにノックアウトされて捕虜になってた軍人が叫ぶ。
ウィリアム少佐って言うんだ。
「いいんだ。あいつだけは殺してやる」
傷だらけの男、ウィリアム少佐の声が震えてる。
やばい。
心を攻めるどころか心の闇を開いてしまったかもしれない。
ゆらりとウィリアム少佐の聖樹装兵が遮蔽物から出てきた。
こええええ。