第十六部 第四章 人質
「その攻撃は、やめてもらおうか」
白人で精悍な顔つきの頬に入れ墨が入った男がボロボロの甲板にいる俺達を睨んだ。
手にはナイフが握られて、毛布をかけただけの燐女さんの喉元に突き付けられている。
さっき、俺を掴んでたパワードスーツの中にいた奴らしい。
そう言えば破壊した後、乗員を動けないように潰すの忘れてた。
迷彩色の服が薄く斜めに斬れて血がついてる。
まいったな。
「ふぁぁぁああああぁぁぁぁ」
燐女さんがあくびをした。
まだ、寝ぼけてらっしゃる。
どんなんだよ。
「動くな」
ナイフを燐女さんの首に押し付けるようにつけて、迷彩色の服を着た男はこちらをさらに睨む。
「お前ら、その聖樹装兵の着装をとけ」
迷彩色の服を着た男が俺達を見回した。
「分かった。その子には何もするな」
俺が聖樹装兵の着装をといた。
カルロス一世とダグダ師匠とミツキとアオイとチアンウェイも舌打ちしながら聖樹装兵の着装をといた。
が、龍女さんは着装したまんまだ。
「別に着装をとかんでも良いと思うぞ」
龍女さんが苦笑した。
「「「はあ? 」」」
俺とカルロス一世とか唖然とした。
「ああ、そう言えば、そうかもしんないですね」
ダグダ師匠も龍女さんの話を聞いて笑った。
「貴様も早く、着装をとけ」
迷彩色の服を着た男が叫んだ。
「大体、そこの破壊王が、その程度のちゃちなナイフで死ぬか」
龍女さんが楽しそうに笑った。
は?
破壊王?
何、その嫌なフレーズ。
「少女だからと言って刺せないと思うなよ」
迷彩色の男がぐっと力を入れて、燐女さんの喉にナイフを少し差し入れた。
が、刺さらない。
それどころか、燐女さんが喉を逆に突き出したせいでナイフが折れた。
「はあああああああ? 」
迷彩色の男が折れたナイフを見て唖然としたら、一気に頭を上げた燐女さんの後頭部を受けて、顔がぐしゃつと潰れた。
おーい。
何、この子。
無敵なの?
「全く、我が夫との余韻に浸っておれば、無粋な男よの」
燐女さんが着装をといた俺に抱きついてくる。
「はぁぁぁぁぁああああ? お前、まさか! まさか! 」
すんごい顔してチアンウェイが俺を見てる。
「え? お前、幼女もいけるの? 」
カルロス一世がドン引いてる。
やめて。
やめて。
そんな目で見ないで。
空気が重い。
「心配するな。姿は幼女でも、齢は百を超えておる」
燐女さんが笑った。
「え? ロリババアなの? 」
思わず言ったら、燐女さんにぶん殴られた。
あんな薬を開発するからこうなるんだ。
涙が止まりません。