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全部社会が悪いんやっ! 〜ある救世主として召喚された男の話   作者: 平 一悟
人物紹介は470から475のあたりにあります。
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第二部 第八章 コンチュエの巫女

 地下水路の戦いが終わり、急行して来た鎮西将軍のリィシン将軍が首都フェイツェイの秩序を回復させた。


 信義に基づいて地下水路に入らない一日の時間をきっちり守ったリィシン将軍が、その後に地下水路に兵を殺到させると、そこには誰もおらず、わずかに反乱を起こした連中の武具などが落ちているだけだった。


 そのおかげで、救世主(ジウシジュ)と最初呼ばれて失望されてた俺は今度は魔法使(ナンウ)いと呼ばれてるらしい。


 敵をかき消してしまったと言う事でそうなったんだそうな。


 まあ、シーサーペント達が丸呑みしただけだなんだが。


 結果として、俺達に対する王城の雰囲気は変わった。


 反乱軍の鎮圧が済み、安全が確認されてから、予定より数日経って俺達はコンチュエの聖樹の所に行くことになった。


 コンチュエの聖樹は王城の中心にあった。


 正確に言うと謁見の間のすぐ後ろだ。


「大きいな」 


 ヤマトに勝るとも劣らない、巨大なコンチュエの聖樹を女帝とともに仰ぎ見た。


 ヤマトと同じように綺麗な泉の中にあり、真ん中に(ほら)があって、そこに祭壇があった。


 ヤマトの聖樹ほど(ほら)が深くなく、祭壇は外からも見えた。


 ヤマトと違うのは祭壇の前に香炉がある。


 そして香炉の前に女性の道士服を着た綺麗な女性が待っていた。


 ヤマトの巫女のレイナさんと同い年くらいだと思う。


「初めまして、()をしておりますリアンフアと申します」 


()? 」


「聖樹様にお仕えして神意を伺うものを、わが国では()と申します」


 リアンフアさんがにっこりと笑って答えた。


「ほら、ご挨拶して」


 ミヤビ王女が俺を肘でついて催促した。


「あ、えーと、ユウキと申します」


 流石に自分で救世主とか魔法使いとか言えない。


 くすりとリアンフアさんが笑った。


 その辺の心の動きを読まれたのかもしれない。


「では、そろそろ頼むよ 」


 女帝がリアンフアさんを見た。

 

 リアンフアさんが頷くと長い線香数本束ねたものを持ち、香炉に線香を掲げて差すと、その前に額ずいた。


 それに合わせるかのように女帝も額ずいたので、俺達も同じように額ずいて礼拝した。


 小声で何かの文言をリアンフアさんが唱えてる。


 早口だし、良くわからないが、全体的に道教テイストだな。


 コンチュエの聖樹の真ん中に巨大な光が出来て、渦を巻きだした。


 そして、それは小さくなりながら、五センチくらいのボール状の光になると、俺の身体に吸い込まれていく。


 吸い込まれる瞬間に俺の身体にいくつもの光の核がそれこそ大量にあるのが見えた。


 そして、静かに消えて何も無くなった。


「あれ? 何か武具でも出てこないの? 」


 しばらく待っていたが、何も起きない。


「外れ? 」


 横でクニヒト少佐が嫌な事を呟いた。


 だが、目の前のリアンフアさんの雰囲気は違った。

 

 物凄く焦ってる。


「聖樹様っ! 一体これはどういう事ですか! 」 


「こ、こんなあり得ない! こんなに聖樹様の核を持ってる人間なんてあり得ない! 」


「落ち着け、リアンフア」


 女帝がリアンフアさんに声をかけた。


「女帝様。 あり得ません。 これでは彼は人間では無い事に……」


 リアンフアさんが震えてる。


 なぜか俺の周りは納得したかのように頷いてる。


「まあ、確かに人間じゃないしね」


 ミヤビ様があきれ顔だ。


「だって、ぼっちだもん」


 ゲロ吐きクニヒトが嫌味ったらしい。


 決めた、帰りにシーサーペントと一緒に暮らせるようにしてやろう。


「大変です! 海側からあの伝説のリヴァイアサンが迫ってきております! 」


衛士が息を切らして駆け込んでくる。


 リヴァイアサンは海中にいる、全身を鱗に覆われて火を吐く伝説の爬虫類の姿をした怪物で最強の生物と言われている。


「リヴァイアサンだと? 」


 女帝が驚いて答えた。


「女帝陛下! 山からもサラマンダーの大量の群れがこちらに向かって来ておりますぞ! 」


 サラマンターは火の精霊にして火を吐く巨大トカゲだ。


 鎮西将軍のリィシン将軍も完全武装の甲冑姿でやってきた。


 まだ刺された後の包帯姿が痛々しい衛将軍のグォクイ将軍も衛士に肩を担がれてやってくる。


「反乱軍に殺された衛士達を埋めた墓から現われたヘル・ハウンドの群れがこちらに向かっております」


ヘル・ハウンドは墓にいる死を司る妖精で、燃えるような赤い目に黒い体の大きな犬の姿をしている。


「大丈夫なのか。グォクイ将軍はまだ動ける状態では無いだろう」


 女帝が心配そうだ。


「いえ、祖国の大事でございます。寝ている場合ではございません。まして、反乱でしくじった身でございます。陛下や祖国の御為に戦わせてください」


 苦しそうに呻きながらも、笑顔でグォクイ将軍は答えた。


 男だな。


「うはぁ、また、このパターンかよ」


 横で、ゲロ吐きクニヒトが呟いた。


 もう少佐って呼びたくないわ。


「一体、どういう事だ。なぜこれほどの、しかも滅多に現われないモンスター達が……」


 リィシン将軍が首を捻った。


「ガクシュン公を捕えようとしたら、マンティコアが現われて、衛士がたくさん殺されました。反乱と何か関係してるのかもしれませんな」


 グォクイ将軍が忌々しそうに答えた。 

 




 


  

 

 

 

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