第十四部 第五章 脱出
睨み合う、アオイと猛禽達の間を視線を妨げないように、そろそろと窓側へ後ずさる。
これは、もう駄目だな。
ふぅとため息ついて思った。
「着装」
言うと同時にその場で聖樹装兵を着装すると、窓をぶち破って、その場から脱出する。
「ああああ、お兄ちゃんが逃げたー! 」
ミツキの絶叫が背後から聞こえる。
さあ、これから大変だ。
龍女さんが追って来たら逃げ切れない。
だが、俺にはこれがある。
「スキル高速逃亡」
これで全力で飛んで逃げてみせる。
アオイ達は好きだけど、まだパパは早い。
逃げ切って見せる。
とにかく全力で飛ぶ。
なるほど、スキルのせいもあるのか凄いスピードだ。
と言うか、逃げたいと言う心がすべてを増幅させているのか。
凄まじいスビードだ。
凄まじすぎてコントロール出来ない。
あれ?
これ、やっちゃった?
ヤマトから一気に海に出て、全くスビードが落ちない。
むう、どうしょう。
加速がハンパねぇ。
とりあえず、島がいくつも見えるんで、木にぶつかるようにして減速するか。
やっちまったなぁ。
それくらいしか減速の方法を思いつかない。
スキル解除を何度もするが出来ない。
それだけ逃げたい気持ちが強かったのか。
バシバシと木を折りながら減速するつもりが、ダメージが大きい。
やべぇ、スビードつきすぎて痛みがハンパ無い。
ほんげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。
と言う事で気絶した。
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パチパチとたき火が爆ぜる音がした。
薄目を開けるとすでに夜のようだった。
何か、肉の焼ける匂いがする。
「おっ、起きたか」
誰かに声を掛けられた。
頭を振り回しながら、起き上がる。
どうにか、身体は無事のようだ。
「こ、これは、どうもすいません」
言いながら、声の方を振り返ると、大きなトカゲ型の人間がいた。
しかも、ちゃんと服を着て剣とか持って武装している。
ぇええええええぇぇえええぇぇ?
「おや? 亜龍族は初めてか? 」
トカゲのおっさんが凄い笑顔だ。
「私の名は、ダグダと呼んでくれ」
言いながら手を差し出して来たので、おずおずと握手した。
「ほぅ。いろいろと戦闘術は習ってるような手だが、聖樹装兵の扱いは今一つのようだな<終末の子>よ」
ダグダがくすりと笑った。
それが俺にとって、こちらの聖樹装兵の剣聖と言われる師匠との出会いだった。