第二部 第六章 地下水路の戦い
俺は女帝の了承を得て、味方である衛士達に頼んで、地下水路内にいる女帝側の衛士を全部引かせて、すべての地下水路の外への出口をふさがさせるように指示した。
「ごめん。すっごい嫌な予感がするんだけど」
横にいるミヤビ王女が俺を見た。
「こんなの出来るわけないだろ! なんで引き受けたんだ! 」
ゲロ吐くしか能の無いクニヒト少佐が騒ぐ。
「いや、悪いんだけど、多分、絶対出来るのよ。今までずっとそうだったし」
ミヤビ王女が確信を持って答えた。
「私もそう思います。ただ、手段がなんなんだろうなぁ? 」
ヨシアキ中佐が不安そうだ。
「絶対に地下水路に入らない事と、一日時間を貰う事、死体が無くなっても詮索しないって約束がすんごい嫌な予感すんだけど」
「まさか、出口ふさいで、轟天とか? 」
クニヒト少佐が思いついたような顔をした。
「お前、街に被害が出るやんか」
こいつ、本当に無能。
その時に先ほどの衛士が走って来て、すべての地下水路内の味方の撤退と地下水路からの外への出口の封鎖が終わった事を告げた。
「わかりました。先ほどの絶対地下水路に入らないなどの約束は全部必ず守ってくださいね」
俺が再度念を押した。
「わかっております」
衛士がうやうやしく答えた。
「では、こちらもはじめさせてもらいます。アオイさん、頼むね」
「はい。これからやらせます」
アオイが答えた。
「あーーーー、分かっちゃった! 何やるか分かっちゃった! 」
ミヤビ王女が頭を抱える。
「それいいの? 本当にいいの? 」
ミヤビ王女が俺に詰め寄った。
「彼らは最近仲間が増えすぎて食事がとれなくて大変らしいんだ」
俺が答えると、ヨシアキ中佐が頭を抱えた。
「俺も分かっちゃったぁ! 」
ヨシアキ中佐も頭を抱えた。
「我々は敵を倒せる。彼らは食事が出来る。互いにウィンウィンだよ」
俺が目を輝かせた。
「何々? 何がどうなのよ? 」
いまだに理解できないゲロ吐く馬鹿がいる。
ムラカミ兄弟も首をかしげてる。
まあ、優れた武人には考えられない事かもしれないけどな。
うん。
武人は仕方がない。
「今、水路に入りました。皆、大喜びで参加してるようで、凄い数が向かってます。この数なら、数時間で終わるかもしんないですね」
アオイが俺に教えてくれた。
「それは良かった」
「何なの? 何をやってんの? 」
ゲロ少佐がいまだにわからんみたいだ。
本気でどこかでクニヒト少佐をゲロ少佐に改名してやろう。
「え? まだ分かんないの? 」
ミヤビ王女が呆れ果てていた。
「こないだ、塩漬け肉を大佐があげてて、懐いてた奴がいただろう」
ヨシアキ中佐がやれやれと言うように答えた。
「え? シーサーペント? え? 」
「はい。今数百匹が海側から地下水路に入って。絶賛踊り食いの最中です」
アオイが答えた。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ! 何考えてんの? 正気なの? 」
クニヒト少佐が五月蠅い。
ちょっと、ムラカミ兄弟が少し引いてるのがショックだったりする。
「正気の沙汰じゃないじゃん」
クニヒト少佐がドン引いてる。
「まあ、なんだ自然界は弱肉強食だからな。人間だって肉を食う。海蛇だって生きてかないとしかたないからねぇ」
「え? それで終わらすの? 」
ミヤビ王女が呆れたような顔をした。
「いいかい、自然界で起きる事を人間がどうのこうの言うのはおこがましい事だと思わないか」
俺が考え深げな渋い顔をする。
ちょっと引いてたムラカミ兄弟もうんうんと納得したように頷いてる。
「さすが、ユウキ様、自然を大切になさってるんですね」
ムラサキ中尉が感動してる。
「いや、あれ、モンスターだろ? 」
クニヒト少佐が愚痴った。
地下水路にこいつも入れようかな?
「あ、完食だそうです」
アオイが笑顔でこちらを見た。
「「「「はやっ! 」」」」
皆が驚いた。
「また、こんな話があったら是非お願いしますだそうです」
アオイがニッコリ笑った。
「分かった。よろしく伝えておいて」
俺も笑顔で返した。
「これで世界の救世主……」
ミヤビ王女が呟いて凄い顔をした。




