第十四部 第三章 コンテナ
「おお、ちょうどいい所にいた」
宰相が俺達に声をかけてきた。
これまた、嫌な予感である。
「実はな、例のあちらの世界のヘリから、大きなコンテナケースが落とされてきてな」
宰相が説明した来た。
「え? 何かヤバイ奴ですか? 」
俺が聞いた。
「いや。罠とかを見破るスキル持ちに何人も確認して貰ったが、中身はやばいものでは無いようだ。だが、一応、お前達の立ち合いで開けたくてな」
宰相が少し心配そうに答えた。
「なるほど、分かりました。では早速行きましょう」
カルロス一世が言うと、宰相を即すように歩いていった。
チアンウェイの話が誤魔化せるから、いいチャンスだと思って逃げたな。
なんか、こういうのばかりうまくなって無いか?
まあ、俺も人の事言えないか。
チアンウェイのブチ切れがこっちに飛び火しても困るので、俺も喜んで宰相についていく事にした。
流石に、あちらの世界の問題では仕方ないのか、チアンウェイもふんと憤懣やるかたなしの雰囲気でついて来る。
王宮から離れたところにある、競技場のようなところに、そのコンテナは置かれていた。
大体、二メートル四方くらいの四角形のアルミのコンテナで、スキル結界を持つものが囲んでいた。
俺達がそこに行くと、国王とイジュウイン大公とサイトウ公爵が居て、周りを近衛の兵士が護衛で百人近く待機していた。
「おう、来てくれたか」
国王が俺達に笑った。
「なんですか、このコンテナは? 」
俺が不思議そうに聞いた。
「分からん、ただ、あちらの世界のヘリがこれを落としていったらしい」
国王が不安そうだ。
「宛名がユウキ宛てなんだよ」
宰相が横で説明して来た。
「はああ?」
俺が困ったように答えた。
絶対、罠じゃん。
ありえない。
「やばくないですか? 」
カルロス一世も答えた。
「だが、罠の形跡も無いし、爆薬の様子も無いんだ」
国王も思案顔だ。
「では、敵のモンスターとかロボットが入ってるとか? 」
俺が聞いた。
「いや。透過スキルが出来る奴に見てもらうと、布と紙のようだと」
「布と紙? 」
俺が驚いて聞いた。
何だろう。
俺の直感が相当やばいのを教えてくる。
「布と紙とは変なものを送ってくるんですね」
チアンウェイも不思議そうだ。
「敵だと厄介だから、とりあえず、俺とお前は聖樹装兵を着装するか? 」
カルロス一世が俺に提案した。
「そうしてくれるとありがたい」
国王が助かったと言うような顔をした。
仕方ないので、俺とカルロス一世は聖樹装兵を着装した。
近衛の兵士とスキル結界を持つものが、数十メートル離れて輪状に警戒する中、俺とカルロス一世の聖樹装兵でコンテナを開ける事になった。
俺がコンテナの金具を開ける様に触ると、蓋が開いて、そこにはたくさんの紙おむつや生まれた赤ちゃんの産着やおもちゃなどが大量に入ってた。
「な、なんだこれ? 」
恐る恐る、宰相がコンテナの中の一番上に置いてある手紙を見つけて、それを手に取った。
宰相が手紙を開いて読み始めた。
「産まれてくる我が孫に使ってくれ。 シュウジ」
ぐはっ。
果たして、これほどダメージの来る贈り物があっただろうか。
その場に俺は聖樹装兵のまま跪いた。
「なんでやねん」
俺が震えた声で呟いた。
だが、恐怖はそれで終わらなかった。
「嘘、お父さん」
いきなり、ミツキの声がして、コンテナに駆け寄ってきた。
龍女さんやアオイもいる。
ミツキが手紙を宰相から受け取ると、こちらをキラキラした目でみた。
ぐははははっ。
やばい。
聖樹装兵の着装をといて、俺はその場に跪いたままだ。
カルロス一世も何とも言えない顔をしている。
「つくらなきゃ。赤ちゃん、つくらなきゃ。皆、待ってるよ」
ミツキが目をキラキラさせてる。
「私も頑張らないと」
アオイも嬉しそうに呟いた。
龍女さんも嬉しそうだ。
すいません。
血の涙が出そう。
横でカルロス一世が俺に無言で敬礼した。
こないだの反対やんか。
泣きそう。