幕間 元居た世界
祐樹が元居た世界で、大学生になった深雪の犬の散歩コースは、ずっと祐樹がかって住んでいた家の前の道を通るようになっていた。
深雪は大学生になった今もイメチェンはせず、相変わらずのショートカットでボーイッシュな感じだ。
なかなか祐樹の住んでいた家は良い場所にあるけれど、噂では外人さんが買ったらしいのだけど、人の住んでる気配が無い。
たまに、管理してる人らしい人が来るのだが、人が住むような感じでは無い雰囲気だ。
「なんか、まだ、祐樹君が住んでるような感じだね」
飼い犬のチコに一人で深雪が話しかけた。
「相変わらず、ここを散歩ルートにしてるのね」
元生徒会長だった井深さくらが背後から声をかけてきた。
こちらは日本美人と言う感じで、肩まで流れるような髪をして、相当な美人だ。
地元の大手企業の会長の娘なだけあって、服装もそれなりのものを着ている。
「まだ、祐樹君に気持ちがあるの? 」
ずばりとさくらが深雪に聞いた。
「……まあ、幼馴染みたいなもんだし」
深雪が少し顔を赤らめながら答えた。
「私もね。知ってるとおり、昔、父の仕事で攫われそうになった時に、彼に救って貰ってね。だから、実は同じ気持ちなんだけどね」
ちょっと、照れながら、さくらが答えた。
「ああ、聞きました。あいつったら、あいつら弱かったしか言わなかったんですけど」
深雪が懐かしそうに笑った。
「そういう事を言いそうね」
さくらも笑った。
「でも、幼馴染なのに、ふいっといなくなるのだけは勘弁して欲しかったな」
小声で深雪が言った。
「彼ね。何かおかしいのよね」
「へ? おかしい? 」
「ええ、ちょっと興信所で調べて貰ったんだけど、全部、ストップがかかるの」
「え? 興信所なんか使ったんですか? 」
驚いたように深雪が聞いた。
「私も意地になっちゃって」
少し恥ずかしそうにさくらが答えた。
「ふぇぇぇ」
深雪が驚いて変な声出した。
「彼の事調べようとすると、公安とか警察からストップがかかるの」
「え? それって犯罪ですか? 」
「いや、そうじゃなくて、ちょっと父の知り合いの政治家に調べて貰ったら、なんか凄い重要人物らしくて」
「は? 」
父の知り合いの政治家まで使って調べてるのにも深雪は驚いたが、祐樹が重要人物と言うのも驚いた。
「セキュリティがかかってるらしくて……」
さくらが思いつめたような顔をして呟いた。
「ど、どういう事? 」
深雪がさらに驚いた。
祐樹は深雪にとってはただの幼馴染でしかないし、実際、そんな重要人物っぽい所は全く無かったはずだからだ。
「一体、どういう事なんだろう」
さくらが不思議そうな顔をした。
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